新たな海底観測手段として注目されている海底センサネットワークを拠点とする、AUV(自律型海中ロボット)の無人・長期・広域展開手法を提案し、海底環境の長期間、広範囲かつ密なモニタリングを行うための技術基盤を構築する。新開発する広域ナビゲーション手法により、音響測位範囲より遠く離れた海底観測ノード間のAUV の自律移動を実現、これまでに開発したドッキング手法の発展により、ノードへのAUV の自動ドッキング、充電および高速データ通信を実現する。本手法は現在常識となっている船舶ベースの海洋調査を根本から変える可能性を秘めており、サイエンス分野のほか、資源開発、漁業、施設管理、捜索救助など幅広い応用が期待される。 本年度は昨年度までの海域試験で得られたデータを用いたシミュレーションにより、インターノードナビゲーションにおいてAUVの自己位置の確率分布がどのように変化するかを定量的に明らかにした。また、ドッキング手法においても近距離での位置決め用のLEDアレイが部分的にしか見えない場合でも活用できるようにアルゴリズムを改良し、オクルージョンや環境に対するロバスト性を向上させた。そしてAUVと海底ステーションを用いて実施した水槽試験および浅海域試験により、音響測位からドッキング、充電に至る流れを確認した。 また、2018年6月に鹿児島湾、9月に内浦湾にそれぞれ2台、3台のAUVを展開し、本手法をAUV間の相互測位にも応用可能であることを確認した。これと並行して、近年登場した小型の音響測位通信装置の性能評価を行い、AUVに搭載した状態で相互測位、通信に使用可能であることを確認した。
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