研究課題/領域番号 |
16H02435
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
笹木 圭子 九州大学, 工学研究院, 教授 (30311525)
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研究分担者 |
平島 剛 九州大学, 工学研究院, 教授 (00175556)
出光 一哉 九州大学, 工学研究院, 教授 (10221079)
三木 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10706386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 放射性核種 / 固化埋設 / ジオミメティクス / 吸着 / 共沈 |
研究実績の概要 |
(1)LDHとカーボンドットとの複合体を合成し、透過型電顕像、表面電位、結晶相、赤外吸収分光により特性化するとともに、SeO42-およびSr2+の同時吸着試験をおこない反応性の評価を行った。さらに、LDHと酸化グラフェン(GO)との複合体も合成し、同様の評価によって比較した。LDH量で正規化したSeO42-の吸着量はどちらも同等のものであったが、炭素量で正規化したSr2+の吸着量は後者のほうがはるかに大きかった。Sr2+のLDH-GO複合体に対する吸着容量は、複合化しないGOに対する吸着容量よりも、GO量により正規化した上で、数倍から10倍高い値となった。LHD-カーボンドット複合体の表面電位はカーボンドットのそれに近いのに対して、LDH-GO複合体の表面電位はLDHのそれに近かった。TEM, FTIR観察から、GOはより粒子径の小さなLDHとの複合化によって層剥離が生じ、有効吸着サイト数が格段に増大し、一方LDHよりもかなり粒子径が小さいカーボンドットではその効果が生じなかった。 (2)SeO42-のエトリンガイト共沈反応において、SO42-の共存は妨害的に作用した。一方、これはそれぞれのオキソ陰イオンのエトリンガイト構造中における配位様式の差に起因していることを、FTIR、放射光分析により明らかにした。エトリンガイト中のSeO42-は外圏錯体をなすのに対し、SeO32-は内圏錯体をなすため、前者はエトリンガイトをマトリクスとする固体残渣中で安定性が劣る。これを克服するために、ガラス固化をこころみ、800°C以上の焼成により、セレンを揮発することなく、TCLP試験にも耐える安定性の高い構造に変化した。 (3)SeO42-をIO3-に置き換えてもエトリンガイトとの共沈実験後の固体残渣中では、いずれも外圏錯体を形成するものの、収着容量は後者のほうが前者よりも大きく有意差があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の実績のほか字数制限上記述していないあとの2点についても成果を挙げており、H29年度だけで、13編の再読付論文(うち12編は国際誌)を公表した。次のテーマへの発展要素も掴みつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)LDH-GO複合体に対して、吸着剤の再生性を検討する。吸着と脱着の過程でディラミネーションとラミネーションを反復するかどうか、他の環境材料としての発展性も見据えて検討する。 (2)IO3-イオンを取り込んだエトリンガイトは脆弱でそのままでは埋設に向かないため、固化法を検討する。熱をかけることにより揮発するヨウ素の性質があるため、熱をかけない方法、具体的には、セラミックライトや冷却等方加圧法などを検討する。 (3)陰イオンとそれを安定化するマトリクスの関係について、エトリンガイトを例として、第一原理計算による裏づけを検討する。 (4)本プロジェクトとの総括をおこなう。未公表の結果についても論文投稿の方針をまとめて早急に実施する。
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