研究課題/領域番号 |
16H02440
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大野 哲靖 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60203890)
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研究分担者 |
梶田 信 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (00455297)
澤田 圭司 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40262688)
荒巻 光利 日本大学, 生産工学部, 教授 (50335072)
田中 宏彦 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (60609981)
河村 学思 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70509520)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合 / 周辺プラズマ / 非接触ダイバータプラズマ / 直線型ダイバータプラズマ模擬試験装置 / レーザートムソン散乱計測 / レーザー吸収分光 / プラズマ流体コード |
研究実績の概要 |
本研究では,直線型ダイバータプラズマ模擬試験装置(DPS)による基礎実験とシミュレーションコードとの相補的な研究により,原型炉のダイバータプラズマ条件(高いイオン密度及び原子密度)での非接触ダイバータによる熱流制御の有効性を検証することを目的としている。具体的には, (1)直線型ダイバータプラズマ模擬試験装置のプラズマを高密度化し,トムソン散乱計測,レーザー吸収分光による中性粒子温度計測により中性ガス温度含めた非接触プラズマのプラズマパラメータの詳細計測を行い,中性粒子・輻射輸送を伴う非接触プラズマ中のエネルギー輸送過程を明らかにする。 (2)ダイバータシミュレーションコード(流体コード+中性粒子輸送コード)を用いて,DPSの非接触ダイバータプラズマ実験のモデリングを行い,実験との比較によりコードの信頼性を向上し,非接触ダイバータプラズマ解析が可能なコードとして確立する。 当該年度は,既存のDPSの放電システムの整備を行うことにより,10^20/m^3の高密度ヘリウムプラズマを生成し,さらに中性ガス導入・排気系を整備することにより,真空容器内での中性ガスの滞留時間の制御を可能とした。さらに,2次元駆動ラングミュアプローブ計測システム,レーザートムソン散乱計測システム,外部共振器型可変波長レーザーを用いたレーザー吸収分光による中性粒子温度計測システムの開発を行った。レーザートムソン散乱計測システムでは,非接触プラズマにおいて,1eV以下の電子温度計測が可能となった。また,レーザー吸収分光計測より,中性ヘリウム原子の温度の中性ガス圧依存性が得られた。 また,環状型磁場配位の周辺プラズマをモデリングするために開発されたプラズマ流体コードEMC3-EireneコードをDPSへ適用するため,大アスペクト比近似を用いてシミュレーションを実施し,初期的な計算結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで既存の直線型ダイバータプラズマ模擬試験装置の整備を行い,目標としていた高密度プラズマの生成,ならびに中性ガスの滞留時間制御を行うことが可能となった。また,国内外との共同研究により,レーザートムソン散乱計測を用いて非接触ダイバータプラズマ中の1eV以下の電子温度計測(分布計測を含む)が可能となり,さらに,レーザー吸収分光システムを用いて中性粒子温度の計測が可能となった。以上のように,当初計画していた初年度の装置ならびに計測装置の整備は計画通りに進んでいる。また,それらの研究開発にともなう成果を,査読付学術論文と国内・国際学会発表論文として公表した。 さらに2次元駆動ラングミュアプローブシステムの計測により,再結合フロント近傍に大振幅のプラズマ揺動が観測され,それにより駆動される径方向輸送が非接触プラズマ特性に影響を与えていることが明らかになった。この研究を遂行するために,高密度重水素放電のための新規放電システムの整備に若干の遅れが生じたが,マイクロ波干渉計,2次元可動ラングミュアプローブを用いた再結合フロント近傍の揺動計測により,その特性が明らかになった。その成果に関しても学会にて発表を行うとともに,査読付学術論文として公表している。 以上より,当該研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
整備した直線型ダイバータプラズマ模擬試験装置と計測装置を用いて,中性粒子の真空容器中の滞在時間が非接触プラズマ形成に与える影響について定量的に評価するための実験を遂行する。さらに,先進ダイバータ配位の有効性を明らかにするために磁場強度分布を変化させて場合の非接触プラズマ形成と粒子負荷低減に関する実験研究を遂行する。 モデリングに関しては,直線型ダイバータ模擬試験装置の配位に適用したEMC3-Eireneコードによる計算を進め,特に中性粒子輸送が非接触プラズマ形成に与える影響に関する解析を進め,実験結果との比較を試みる。 さらに,今回新たに発見された再結合フロント近傍のプラズマ揺動に関しては,多チャンネルのマイクロ波干渉計ならびに2次元駆動ラングミュアプローブを用いてさらに詳細にしらべ,その駆動機構を明らかにする。 また,得られた成果は速やかに学会発表ならびに学術論文として公表する。
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