研究課題
2016年度に実施した高温壁の能動的壁制御により、 壁温を200度まで上げて実験を行い、壁温120度で実現した1時聞を超える長時間放電について1 )実機実験による水素バリアモデルの検証について、および2)再堆積層膜厚分布計測について論文を執筆した。QUESTの実験で得た知見から壁モデルを作成し、通常使用される壁での完全反射モデルとQUEST壁モデルを組み込んだ粒子バランス計算を実施し、QUEST壁モデルと完全反射モデルで電子密度の時間発展や到達電子密度に差があることを示した。定常状態での電子密度の差が生じる理由について、壁モデルの差によって真空領域に存在する水素原子と分子の密度に差が生じることにより、荷電交換によるプラズマからの流出束が異なることが原因であることを見出した。このような差が将来の核融合炉でも現れるかどうかを、現在統合コードを用いた計算で検証中である。能動的壁制御を放電中に実施するために真空容器内に取り付けた上側の高温壁の水冷配管を接続した。1時間を超える放電で現れた水素のバルマー線強度の上下非対称性の原因を解明するために、来年度は上側のみ冷却水を流すことで壁温度を下げる実験を行う予定である。動的リテンションを実測するために高速試料搬送装置を組み上げ、試料による動的リテンションの実測および再堆積層の膜厚や成分によるリテンション量の比較等を行うことで、水素バリア形成効果を定量化し、実機プラズマ対向壁で起こる水素リサイクリングを予測できるようにする。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に実施した壁温制御による1時間を超える長時間放電に引き続き、トロイダル効果と再堆積層の上下不均一性による中性粒子分布の上下非対称性を活用して、中性粒子をクライオポンプが3台(上側は1台)設置されている下側で圧縮して排気効率を高める実験を行う予定であったが、平成29年度は、クライストロン管の不調により、長時間放電の実験は実施できなかった。来年度の実験のための準備として上側高温壁の温度制御のための水冷配管の真空容器内および真空容器外の接続を実施した。この結果、高温状態から放電中に壁温度を下げることが可能となり、平成29年度中にクライストロン管の整備が終了したため、平成30年度には実機では世界で初めてとなる壁温制御による能動的壁制御の実験が可能となる。将来の核融合炉での壁モデルの粒子バランスに与える影響を評価するために、QUEST実機の粒子バランスを、壁モデルを使って再現した。通常使用される完全反射モデルとの比較を行い、壁モデルの影響が電子密度に大きな影響を与えることを見出した。
平成30年度は、中性粒子を下側に圧縮できるトロイダル磁場の方向で、上下のダイバータ板のプラズマとは逆側の水素分圧を同時に計測して中性粒子の圧縮の効果を検証し、排気効率の向上による、高温壁環境下での更なる長時間化を目指す。また粒子制御の方法として壁温度の変更の効果を長時間放電で実証し、能動的壁制御の効果を検証する。材料による動的リテンションの違いを評価するために、高速試料搬送装置を実機に設置して、再堆積層の厚み依存性や材料依存性を調べて、水素バリアモデルの定量化を実施し、将来の核融合炉での粒子バランス制御を見通せるような結果を得ることを目指す。プラズマ誘導脱離束の計測に関しては、水素のバルマー系列の発光の上下非対称性や、プラズマ電流の向きによる不純物の発光の差を確認している。これらの結果からプラズマ誘導脱離の定性的評価を開始しているが、定量評価のためには高速試料搬送装置での基礎実験との連携が必要であり、実機と試料の計測をこれまで通り同時進行で行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 15件、 招待講演 3件)
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