研究課題/領域番号 |
16H02442
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
伊藤 公孝 中部大学, 総合工学研究所, 特任教授 (50176327)
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研究分担者 |
神谷 健作 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 那珂核融合研究所 先進プラズマ研究部, 上席研究員(定常) (60360426)
伊藤 早苗 九州大学, 応用力学研究所, 特任教授 (70127611)
居田 克巳 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (00184599)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | H-モード / 輸送障壁モデル / 径電場分岐理論 / 多スケール乱流物理学 / 実験検証 |
研究実績の概要 |
この研究は、先進的プラズマ乱流物理学の成果に立脚し、核融合研究の高温磁場閉じ込めプラズマのH-モードの定量的モデル構築を目的とする。代表者らが創始した径電場分岐理論に立脚し、最新のマルチスケール乱流物理学を取り入れ、H-モード理論を完備する。国内外のトカマク実験と比較し、検証を行う。H-モードの輸送障壁の形成機構や構造の定量的モデルを提示し、核融合燃焼プラズマ研究や制御のための学理基盤を構築する事を目指す。 この目的に向けて、理論研究および実験的研究を進めて大きな成果を得た。バリア構造のモデルについて電場勾配および電場曲率を相補的に含む形に定式化した。JT-60Uトカマクでの詳細電場計測実験結果を対象に、乱流輸送の抑制を定量的に検証した。同様の手法を、JFT-2Mトカマクの実験データに適用し、電場勾配および電場曲率の双方が揺動強度の抑制に相補的に寄与していることを示した。乱流揺動と乱流輸送の双方に対する効果を定量的に評価することにより、輸送障壁形成において、電場勾配および電場曲率の双方が本質的な役割りを果たしている事を具体的に示した。電場曲率効果について、当初定式化した機構だけではなく、独立な機構の重要な働きも見出した。並行して、周辺輸送障壁の遷移モデルをコアの輸送ヒステリシス(温度勾配と熱流束の関係式に現れるヒステリシス)解析に応用した。この系の非線形伝播応答の理論式を多くの実験装置に適用し、非拡散的な速い応答の評価を進め、総合論文も発表した。また、輸送障壁内の乱流輸送の研究を開拓した。乱流揺動によりメゾスケール場(帯状流や測地線音波GAM)が作られると、乱流揺動を抑制する事とともに、本研究では、GAMによって揺動が空間を大域的に移送され、輸送障壁に侵入する研究成果も得られた。大域的な過程を取り入れ、輸送障壁内部での乱流輸送の研究に新展開が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に説明したように、理論や実験による確認方法等の研究が大きく進んだ。研究目的の中心をなすテーマについて大きな進展(一例は、電場勾配と電場曲率の相補的効果の実験検証など)が得られるとともに、当初予想もされていなかった研究テーマについて進展が生まれた(周辺輸送障壁解析法を、コアプラズマのヒステリシスのもたらす応答解析に広く適用したことや、輸送障壁への乱流の侵入など)。これらを始め大きな成果が上がり、予想以上の成果が達成されたと自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに、バリア構造の理論を開拓し、乱流輸送の抑制の検証法を構想した 。そして、遷移および乱流抑制の実験検証を進めた。計画は極めて順調に進展した。さらにコアのヒステリシスとの統合を考えた。その結果、水素同位体効果を理解する新しい手がかりを得るなどの発展的結果も生まれた。計画は極めて順調に進展し、予想以上の広がり実現している。 これらの成果に立脚し、2018年度には、3つの柱を構想して研究を進める。(1)まず、昨年までに、理論モデルと実験との比較が進められ、成果が数多く論文として発表され、揺動計測の実験データ解析も充実しつつある。電場曲率効果というテーマについて、当初定式化した機構だけではなく、独立な機構の重要な働きも研究が始まっている。この流れをさらに充実させ、研究統合を発展させる。(2)次に、輸送障壁内の乱流輸送の研究を進展させる。乱流塊が移送される過程も取り入れ、輸送障壁内部での乱流輸送の研究を開始する。乱流塊の移送をもたらす機構の一つとして、測地線音波と呼ばれる揺動(メゾスケール電場の一種)により乱流が半径方向に運ばれるという、動的な過程まで含めて輸送障壁形成の機構を考察する。そのために、分担者を増やし、本テーマに取り組む。並行し、複数の種類の乱流揺動が存在するような場合も考察する。輸送障壁が、空間的に、または時間的に、二段階の遷移を示すことを理論的に導く可能性もあり研究を進める。(3)コアプラズマで得られている輸送ヒステリシス(温度勾配と熱流束の関係式に現れるヒステリシス)や、粒子補給に伴う乱流駆動という新しい機構を取り入れて、輸送障壁生成消滅の理論解析を試みる。輸送ヒステリシスを含む系の非線形伝播応答の理論式を多くの実験装置に適用し、非拡散的な速い応答の評価を進める。本計画で示される物理モデルの第一原理的な実験観測の方法も考察する。
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