研究課題
昨年度までに、バリア構造のモデルを開拓し、乱流輸送の抑制の検証法を構想した。そして、電場形成・遷移および乱流抑制の実験検証を進めた。また、電場曲率効果について、当初定式化した機構だけではなく、独立な機構の重要な働きも見出した。計画は極めて順調に進展し、予想以上の広がりが実現している。非線形構造である振動型の帯状流によって、乱流塊が捕捉され輸送障壁内に侵入する現象も解析し、輸送障壁内部での揺動の起源の一つとして定式化した。さらに何十年も未解明だった問題(装置容器の材料や給気法が主プラズマの閉じ込めに影響する実験事実)にも研究を拡張した。かねてより代表者らは閉じ込め装置の壁材がH-モードの閉じ込め改善度に影響する上で中性粒子の役割を指摘してきた。その考えを拡張し、粒子補給によって生み出される乱流揺動を解析した。その結果、粒子補給量がプラズマ閉じ込めに影響すること、この機構が生成されたH-モードをより安定状態ならしめることなどを見出した。別の未解明問題としては、H-モード遷移の閾値より低い入力状態でプラズマ中央部での崩壊現象が起きると、それに付随してH-モード遷移が起きるという実験観測が30数年知られて居る。従来は、崩壊現象による熱パルスが「不足していた」パワーを補うことが原因だろうと考えられていたが、大型装置での実験の詳細分析の結果、乱流塊と急峻な径電場の伝播が遷移を引き起こして居ることを実証した。こうした改善閉じ込め現象などに関する成果は、何十年来知られていた未解明問題に取り組む新たな糸口となると期待される。さらには、乱流がプラズマ中のプラズマ断面の一部分に乱流が局在すること(H-モードに重要な働きを持つ可能性を代表者らが理論的に指摘している)のレビューを出版し、今後の研究者への指針を与えた。
1: 当初の計画以上に進展している
粒子補給によって生み出される乱流揺動を解析し、この機構が生成されたH-モードをより安定状態ならしめることなどを見出した。また、H-モード遷移の閾値より低い入力状態でプラズマ中央部での崩壊現象が起きると、それに付随してH-モード遷移が起きるという現象について、乱流塊と急峻な径電場の伝播が遷移を引き起こして居ることを観測し論文原稿にとりまとめた。こうした成果は、何十年来知られていた未解明問題に取り組む新たな糸口となると期待される。予想以上に進展して居ると結論する。
2018年度までの成果に立脚し、2019年度には、次のようなテーマについて選び研究を進める。(1)理論モデルと実験との比較が進められ、揺動計測の実験データ解析も充実しつつある。この流れをさらに充実させ、研究統合を発展させる。(2)次に、輸送障壁内の乱流輸送を研究する。乱流塊が移送される過程として測地線音波(メゾスケール電場の一種)と呼ばれる揺動に昨年より着目しているが、それに加え、径電場の曲率による乱流排斥の効果も検討する。かねてより分担者らによって、複数の種類の乱流揺動が存在しうる場合、イオンスケールの揺動が径電場で抑制されると、さらに波長の短い揺動が逆に増える可能性があることが理論的に指摘されており、そうした問題も考察する。輸送障壁が、空間的に、または時間的に、二段階の遷移を示す可能性もあり研究を進める。(3)粒子補給に伴う乱流駆動という新しい機構に着目することによって、輸送障壁がより安定化される機構を理論的に研究する。(4)トカマクでは内部崩壊現象が起きると、中心部から周辺部へエネルギーが急に放出され、H-モード遷移に影響することが知られている。乱流塊と急峻な径電場の伝播が遷移を引き起こして居ることを観測した。その物理機構を研究する。(5)これまでの研究によって培われた輸送障壁の描像を、さらに広い自然界の問題に応用し波及効果を増すことにも務め、そのために分担者を増員する。国際共同データ解析の活動もふくめて、本計画で示される物理モデルの第一原理的な実験観測の方法も考察を続ける。実験研究・観測を指導している。それらの国際的共同実験研究のとりまとめにも寄与する。理論・実験等について得られた成果を取りまとめ、成果の発信に努める。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
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