研究課題/領域番号 |
16H02443
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
室賀 健夫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60174322)
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研究分担者 |
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (00322529)
鵜飼 重治 北海道大学, 工学研究院, 特任教授 (00421529)
笠田 竜太 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20335227)
大野 直子 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40512489)
能登 裕之 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50733739)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 銅合金 / プラズマ対向機器 / 高温静水圧プレス / ナノ粒子分散 |
研究実績の概要 |
水冷型ボールミルを用いて作製したCu-Y2O3系ODS銅合金の優れた強度特性および熱伝導特性の微細組織学的要因を明らかにすることができた。特に、微細結晶粒組織の形成によって、強度特性と熱伝導特性のトレードオフ関係を克服できる可能性が示唆されたことによって、今後の合金開発の指針が得られたことは大きな成果である。また、マイクロピラー圧縮試験によって、単結晶銅からCu-Y2O3系ODS銅合金の強度特性におけるサイズ効果を明らかにすることができたので、今後は耐照射性評価法として活用できるようになったことも特筆すべき成果である。(笠田) 強度と延性を両立させたCu-ODSの作製を目指した研究を発展させ、室温で80%の冷間圧延とその後の800 ℃×30分の再結晶熱処理により、Bi-modalな結晶粒サイズ分布を有するCu-ODSの作製に成功し、室温において80%冷間圧延加工時と同等の強度(約500MPa)で優れた延性(19%破断伸び)を達成した。(鵜飼、大野) メカニカルアロイング(MA)-高温静水圧プレス(HIP)法を用いた分散強化法の新たな段階として、MA中における強化粒子増加を目的とした添加技術を提案した。この添加法はMAの途中に、別の化合物(酸化銅:CuO)を添加するというこれまでに例のない手法である。本研究では、この手法を用い試作した材料の機械的特性をはじめ、焼結前の合金化粉の詳細なデータを採取することにより、新しいCuO添加法が強化粒子(酸化物)増加に及ぼす影響を明らかにした。 (菱沼、能登、室賀) このように、平成30年度は銅合金の製作法の高度化、製作後の加工・熱処理の最適化、強度特性、機能特性と微細組織の相関を明らかにすることができ、最終年の技術統合に向けて大きな進歩があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに作製したCu-Y2O3系ODS銅合金の優れた強度特性の微細組織学的要因を明らかにするために、EBSDやTEMを用いた解析を進めた。これらの研究により、本合金の強度特性は、数10nm程度の微小な結晶粒サイズによる影響が大きく、酸化物粒子の分散を改善すれば、一層の強化が見込めることが示唆された。また、マイクロピラー圧縮試験によって、バルク強度特性を予測する評価が可能であることが確認され、今後のイオン照射研究に活用することが可能となった。(笠田) H29年においてCu-ODSの強度及び伸びは確保できていたといえるが、H30年度は更なる特性の向上を目指して微細組織制御を行い、強度を保ったまま伸びを大きくする加工熱処理手法を確立したことから、期待以上の成果であるといえる。(鵜飼、大野) 新しいCuO添加法によるMAにおける各合金化時間の粉末を分析した結果、CuO添加後、この添加材自身が十分に合金化段階に入ったことが確認できた。この粉末をHIP装置により焼結した試作材を観察すると、酸化物の増加および機械的特性(硬さ)の改善が確認できた。これはこの酸化物が強化粒子として寄与していることを示している。 (菱沼、能登、室賀) 以上のように、各製作法の高度化によって特性の向上が達成されるとともに、その微細組織に基づいた解析、特性向上のメカニズムが明かになり、当初の計画以上の進歩があった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、酸化物粒子の分散状態の改善を目指し、MA過程の改善を進めるとともに、現在まで得られている合金の耐照射性評価として、BR-2による中性子照射を行った試料やイオン照射材の評価を進める予定である。これらの成果より、Cu-Y2O3系ODS銅合金のダイバータヒートシンク材としての基本特性についてまとめる。 (笠田) H30年度までに作製に成功した合金(微細粒組織、バイモーダル組織)を基に、ダイバータの使用温度をカバーする温度範囲において変形の温度依存性・歪速度依存性・粒界すべりと動的回復挙動を調査し、ODS銅合金の変形機構を評価する。冷間圧延時の割れ抵抗性の大幅向上を目指してODS銅合金中の溶存酸素濃度の低減を行う。(大野) 新しいCuO添加法によるMA試作材の機械的特性、熱伝導特性などを詳細に調査する。現在得られているデータおよびこれまでの分散強化金属の傾向を考慮すると、合金化後の焼結温度(HIP処理温度)が材料特性に影響を与える可能性があるため、その最終HIP処理温度の効果について検討する。(菱沼、能登、室賀) 以上の成果をまとめて、ODS銅合金の製作技術の最適化、強度・機能の向上とその微細組織からのメカニズム、ダイバータ適用への指針とその性能予測、を行う。
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