研究課題/領域番号 |
16H02444
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 聖潤 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50574357)
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研究分担者 |
寺川 貴樹 東北大学, 工学研究科, 教授 (10250854)
伊藤 辰也 東北大学, 工学研究科, 助教 (20757653)
船木 善仁 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 講師 (50261491)
松山 成男 東北大学, 工学研究科, 教授 (70219525)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 放射性廃棄物 / 放射線医学 / 環境安全 / 保険物理 |
研究実績の概要 |
本研究では高レベル放射性廃液の高度分離技術開発と分離した核種の医療応用技術開発の両面にわたる総合的な検討から、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減及び有効利用を目指す。平成29年度は加水分解性核種(Zr, Mo)用新規吸着材の開発及び評価、90Yの高純度供給システムの開発について研究を行った。 高レベル放射性廃液(HLLW)の成分・組成を非放射性の成分により模擬した硝酸水溶液中からのZr及びMoの分離には、オキシム系抽出剤を多孔性シリカ担体粒子(SiO2-P)に含浸担持して抽出剤含浸吸着材を創製した。含浸吸着材の基本特性は、走査型電子顕微鏡・エネルギー分散型X線分光法及び示差熱・熱重量分析により、その表面構造や重量組成・熱分解特性を測定評価した。含浸吸着材を用いて模擬した硝酸水溶液中からZr及びMoを選択的に分離・回収することを確認した。試験の硝酸範囲においては、Zr及びMoに対し吸着性を示し、Moの吸着は10分以内に平衡に達した。Zr及びMoとその他FP元素を分離することができた。また、HLLW中の発熱性核種である90Srを含浸吸着材によって抽出クロマトグラフィ分離し、分離された90Srから生じる娘核種90Yの医療応用を前提とし、酸濃度における90Srからの90Y分離回収を行なうためにDtBuCH18C6、CMPO及びHDEHP+Dodec抽出剤含浸吸着材をそれぞれ作製し、Sr、Y混合酸溶液を用いてSrとYの相互分離性を検討した。含浸吸着材を用いることにより、Sr、Y混合酸溶液からYを完全に分離回収することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高レベル放射性廃液(HLLW)の成分・組成を非放射性の成分により模擬した模擬HLLW条件下での抽出剤含有イオン液体吸着材を用いて加水分解性核種(Zr, Mo)用新規吸着材の開発及び評価、90Yの高純度供給システムの開発はほぼ終了しており、全体的な分離プロセスは調整段階である。これについては基礎技術をすでに持っているため、大きな障害はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
発熱性核種、白金族元素及び加水分解性核種の分離プロセスの開発では、抽出剤含有イオン液体含浸吸着材からの各核種の分離条件を検討し、それぞれの分離技術はすでに実現している。 今後は、MA(III) / Ln(III)相互分離用新規吸着材の開発及び評価では、MA(III)とLn(III)は非常に類似した化学的性質を持つため、これらの相互分離技術の開発は極めて難しいものとなっている。しかし、MA(III)に選択性の高いアルキル基を持つビス(ジアルキルトリアジン)ピリジン抽出剤を含浸した吸着材を用いた相互のクロマト分離の可能性を見出している。よって、これまで以上に優れた吸着選択性や吸着速度、分離特性を有するMA(III) / Ln(III)相互分離用吸着材を開発するために、抽出剤の構造を有する幾つかの含浸吸着材を設計・合成し、多孔性担体粒子に含浸担持した新規含浸吸着材を調製する。また、含浸吸着材の物性評価を行う。吸着性能及び分離性能を予備的な抽出試験、模擬HLLWを用いたバッチ吸着試験及びカラム分離試験等から評価を行う。 90Yの高純度供給システムの開発では、90Srから生成した90Yの高純度単離精製プロセスを開発するために、Sr(II)に高い選択性を示す新規含浸吸着材等を開発し、後段のY(III)のミセル中への展開に有利となる塩酸溶液系でのY(III)溶離条件及びカラム設計を行い、含浸抽出剤の耐放射線性の評価と合せて、対象とする腫瘍放射線治療に実用的な90Yの供給法を開発する。
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