研究課題/領域番号 |
16H02450
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石田 武和 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00159732)
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研究分担者 |
小嶋 健児 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (60302759)
町田 昌彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主席 (60360434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超伝導材料・素子 / 量子ビーム / 放射線 / 超伝導中性子検出器 / 中性子イメージング / FPGA読出回路 / シミュレーション / 時間依存Ginzburg-Landau理論 |
研究実績の概要 |
研究の目的:電流バイアス運動インダクタンス検出器の研究進展を受け、非平衡ダイナミクスの学理を極め、その成果に基づき空間分解能等を高めることで中性子ラジオグラフィを未踏の性能に飛躍させる。10B膜を積層した2枚(X位置検出用とY位置検出用)の15mmx15mm有感検出器(900nm線幅Nbナノ細線メアンダで総延長150m、ピッチ1.5μm)を直交配置し、2つの核反応生成物(7Li、4He)それぞれによる準粒子励起スポットがX細線とY細線で同時に発生し、2つの電磁パルスがNbメアンダ線路の両端に高速伝搬する到着時間差を精度1.5nsで計測し、X方向、Y方向15μm分解能で飛来位置を特定可能な100万画素ラジオグラフィが実現することを目的としている。 平成28年度の研究実績:(1)超伝導検出器を設計し、産総研に製作を依頼して素子を完成させた。その中で、2つのCB-KIDのライン&スペースを半位相分ずらせて反転積層して計測するデュアルCB-KID方式を試みたが、2つのCB-KIDで伝搬速度が異なるという課題を見つけた。(2)東海村J-PARC MLFでパルス状中性子ビームを用いて、時間デジタル変換回路(TDC)とFPGAからなるKalliope読出回路を改造して、高速でデータ集録のできるシステムを完成させた。(3)中性子ビームタイムにてボロン10の100ミクロンのドットアレイの中性子イメージングを行い、TDCの時間分解能が1ナノ秒で、明瞭な中性子イメージング画像を得た。試験を行った。(4)中性子検出器の実験結果の説明のため時間依存のギンツブルク・ランダウ理論の適用を検討した。また、信号の伝搬を説明するためにジョセフソン伝送線路として近似する現象論理論を構築した。今後は、S-I-S伝送線路モデル理論を基にしたシミュレーション研究を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は(1)超伝導検出器素子の試作に成功した。そして、そのひとつのデュアルCB-KID方式の試験で2つのCB-KIDで伝搬速度が異なる課題を見いだすことができた。(2)中性子イメージングを高速で実施するために時間デジタル変換回路(TDC)とFPGAからなる読出回路を改造し、Kalliope-DC回路を製作し、ボロン10の100ミクロンのドットアレイの中性子イメージングを行い、明瞭な中性子イメージング画像を得た。(3)中性子検出器の実験結果の説明のためにS-I-S積層型ジョセフソン伝送線路として近似する現象論理論を構築し、実験で得られた伝送速度の説明に成功した。これらの成果から、初年度としておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画:(1)超伝導検出器素子の試作が安定的にできることを目指す。特に、中性子反応層であるボロン10の層に関しては、MBE法と塗布法を開発しているが、条件やプロセスの開発が必要である。(2)中性子イメージングを高速で実施するだけではなく空間分解能を高めるためにTDCの時間分解能を1ナノ秒から25ピコ秒に高める改造に着手する。これにより1ミクロンの分解能が到達可能になる。(3)中性子検出器の実験結果の説明のためにS-I-S積層型ジョセフソン伝送線路モデルではバイアス電流がないと仮定していた。実際には、伝搬速度は温度とバイアス電流に依存するはずであり、現象論理論を拡張する。(4)伝送速度の温度依存、バイアス電流依存の系統的実験を行い、実験と理論の比較を行う。(5)シミュレーションでは、既存の時間依存のギンツブルク・ランダウ方程式シミュレーションコードの改良をスタートする。
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