研究課題
電流バイアス運動インダクタンス検出器の学理を究め、その成果に基づき、空間分解能高い中性子イメージングの性能を未踏の領域まで高めることを目指した。15mmx15mmの有感領域(900nm線幅を持つNb細線メアンダで総延長150m、ピッチ1.5μm)のXとY検出器を直交配置し、10B層を積層する。2つの核反応生成物(7Li、4He)軽イオンが準粒子メゾ励起をX細線とY細線に同時に発生させて、15μm分解能で中性子飛来位置を特定し100万画素イメージングの実現を目指した。また、2つのCB-KIDのライン&スペースを反位相分ずらせて反転積層し、その和信号をデュアルCB-KID方式で検出し、中性子不感帯を大幅に低減することで中性子検出効率を改善を目標としてスタートした。これまでに、【超伝導CB-KIDチップの製作と評価】DUAL CB-KIDのX素子とY素子の伝搬速度が異なり、対策が必要となった。【CB-KIDの信号読出計測系の構築】波形データ保存のオシロスコープ計測系とKalliope回路高速計測系を整備した。特に、Kalliopeでは信号タイムスタンプと信号パルス幅の閾値時間幅(TOT)を残せるようにした。高空間分解能のサさらに高めるため、FGATIのGHz帯動作高速アンプ装備の特定用途集積回路(ASIC)1CHテスト回路を作製した。【J-PARCのマシンタイムの確保】2017年度は5回のマシンタイムを確保して実験を行った。【CB-KIDの動作の超伝導ダイナミクスの学理】CB-KIDでは2対の逆極性の信号が異なる方向に伝搬するが、その発生原理をLondon-Maxwell理論から明らかにした。検出器学理解明のため、空洞共振器における電磁波伝搬の理論を調査し、中性子等の放射線入射後の熱発生に伴い生じる電磁波伝搬のための数値シミュレーション手法の研究を進めた。
2: おおむね順調に進展している
既に、百万画素レベルの中性子イメージングに成功している。Kalliope回路を改造したKalliope-DC回路での計測システムは完成している。さらに高い分解能を達成するのための第一歩としてテスト回路の試作に着手できた。運動インダクタンス検出器の検出機構の学理研究については、理論研究を中心に進めており、数値計算への実装等については未達であるが、モンテカルロ法を用いた放射線輸送シミュレーション等の新たな研究についても着手できたことは計画を上回る達成事項となっている。
【クライオスタットの改造】室温サンプルの計測が可能なように、クライオスタットを絞る改造(修理)を検討する。【検出器の信号波形のシュミレーション】CB-KIDの信号波形は信号波高値と信号半値幅が幅広く分布するが、その原因は理解できていない。モンテカルロ法であるPHITSコードによる素過程の解析と超伝導現象論を組み合わせて信号波形の再現を目指す。【J-PARCでの実験】マシンタイムを申請して採択された場合は、中性子照射実験を行う。【CB-KID検出器素子の安定した製作】CB-KIDの製作は長尺のナノ細線が断線しないとか、XY検出器の相互やグランドプレーンの間にリーク電流が流れないことが必要であり、開発要素が強いが、その改善に取り組む。【計測システム】今年度作成のFGATI(GHz帯で動作する高速アンプを内蔵した特定用途集積回路)の動作実証試験を行う。擬似信号源を用いたオフラインテストに次いで、J-PARC MLFにおける中性子信号を入力して応答をチェックするオンラインテストの2段階を踏む。将来は、上記アナログ回路を既存のKalliope回路に入力し、デジタル信号処理を試みる。【画像処理】この方法は、測定と解析をツー・ステップで行うため解析で画像化することの高速化が求められる。その対策をソフト開発として行う。【理論研究】放射線輸送シミュレーションと超伝導検出器シミュレーションを結合することで、新たな理論体系を構築する。【研究体制】研究分担者を追加して(小嶋、宍戸、幸田、Vu、町田)の体制として、研究協力者として小山富男(大阪府大)、原田正英、相澤一也、Alex Malins(原子力機構)、宮嶋茂之(NICT)、日高睦夫(産総研)が研究進展に協力をする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件)
JPS Conf. Prcc.
巻: 21 ページ: 011062(1-6)
10.7566/JPSCP.21.011061
Superconductor Science and Technology
巻: 30 ページ: 094003~094003
10.1088/1361-6668/aa7a3d