研究課題
本研究では、狂犬病ウイルスベクターを用いた入出力解析、多領域多点同時記録によるネットワークダイナミクス解析、ウイルスベクターを用いた遺伝子操作による神経路選択的機能介入などの先端的神経ネットワーク解析システムを駆使して、霊長類の大脳皮質―大脳基底核連関の構造と機能を明らかにすることを目的としている。マカクザル(ニホンザルもしくはアカゲザル)を用いて、平成29年度は以下の3つの研究計画をスタートした。(1)狂犬病ウイルス(RV)ベクターを用いた眼球運動関連皮質領野の投射様式と多シナプス性入力様式の解析については、研究代表者らがすでに開発済みである高発現型multi-color RVベクターを用いた逆行性越シナプス的多重トレーシングを、実際に眼球運動関連皮質領野において実施する前に、これまで実績のある運動前野(背側部および腹側部)にまず適用し、トレーシングシステムの検証をおこなうとともに、運動前野に由来する大脳皮質―大脳基底核ループ回路の構造基盤を解析し、現在、得られたデータを原著論文にまとめる準備を進めている。(2)多領域多点同時記録による眼球運動関連ネットワークダイナミクスの解析については、研究代表者らがすでに導入済みである多領域多点同時記録法を用いて、眼球運動課題遂行中のマカクザルの眼球運動関連皮質領野、大脳基底核、上丘から同時記録をおこなう実験システムのセットアップを進めている。(3)神経路選択的な光遺伝学的抑制法や化学遺伝学的抑制法の確立については、研究代表者らがすでに霊長類において開発に成功し、最近、原著論文として発表した光遺伝学による神経路選択的刺激法を応用し、搭載遺伝子を交換して光遺伝学的抑制法を霊長類で確立するためのウイルスベクターの作製を進めている。
2: おおむね順調に進展している
「狂犬病ウイルス(RV)ベクターを用いた眼球運動関連皮質領野の投射様式と多シナプス性入力様式の解析」に関する研究計画については、現在、得られたデータを原著論文にまとめる準備を進めている。また、「多領域多点同時記録による眼球運動関連ネットワークダイナミクスの解析」と「神経路選択的な光遺伝学的抑制法や化学遺伝学的抑制法の確立」に関する研究計画についても、現在、実験システムのセットアップや実験の鍵を握るウイルスベクターの作製を進めており、初年度としては全体的に研究が順調に進展していると考えられるため。
研究計画は当初の予定どおり順調に進展しており、平成29年度は前年度にスタートした以下の3つの研究計画を継続する。(1)RVベクターを用いた眼球運動関連皮質領野の投射様式と多シナプス性入力様式の解析については、研究代表者らがすでに開発済みである高発現型RVベクターを用いた逆行性越シナプス的トレーシングと超高発現型ウイルスベクターを用いた順行性単シナプス的トレーシングを同一個体に適用し、大脳皮質―大脳基底核ループ回路の構造を解析する。(2)多領域多点同時記録による眼球運動関連ネットワークダイナミクスの解析については、研究代表者らがすでに導入済みである多領域多点同時記録法を用いて、眼球運動課題遂行中のマカクザルの眼球運動関連皮質領野(前頭眼野、補足眼野、外側頭頂間野)、大脳基底核(線条体、黒質網様部)、上丘、視床から同時記録をおこない、眼球運動関連ネットワークのダイナミクスを解析する。(3)神経路選択的な光遺伝学的抑制法や化学遺伝学的抑制法の確立については、研究代表者らはすでに、世界に先駆けて神経路選択的活動操作法を霊長類において確立しており、特に最近、光遺伝学を用いたFEF―上丘路の選択的活性化がサッカードを誘発することを報告している。この神経路選択的光刺激法に加え、搭載遺伝子を交換して光遺伝学的抑制法や化学遺伝学的抑制法を霊長類で確立する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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