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2016 年度 実績報告書

グリア細胞を支点とした加齢性長期記憶障害の分子・神経機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H02461
研究機関公益財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

齊藤 実  公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 基盤技術研究センター長 (50261839)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード老化 / 神経科学 / 脳・神経 / 昆虫
研究実績の概要

加齢性長期記憶障害(LTM-AMI)とグリア細胞でのklg/Repo/deaat1との因果関係を調べるため、Geneswitch systemにより加齢体のグリア細胞でRepoまたはdeaat1を過剰発現させたところ、いずれもLTM-AMIが顕著に改善された。さらに加齢体でRepoを強制発現させると低下していたdeaat1の発現が回復した。そこでdeaat1がグルタミン酸トランスポーターであることをふまえ、加齢体では長期記憶学習により上昇した神経活動が、学習終了後も低下しないことがLTM-AMIに関与することが示唆された。そこで神経活動の指標となるS6リボゾーマルタンパクのリン酸化状態を長期記憶学習後の加齢体で調べたところ、若齢体に比して顕著に上昇していることが分かった。さらに長期記憶学習後の個体に神経活動を抑制する神経保護薬を摂取させたところLTM-AMIの顕著な改善が観られた。以上の結果から若齢体では長期記憶学習後に上昇した神経活動(放出された過剰な細胞外グルタミン酸)がklg/Repo/deaat1経路により速やかにグリア細胞に回収されるのに対して、加齢体では十分な回収が行われないため記憶の保持、または読み出しが障害されることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画どおりに加齢性長期記憶障害(LTM-AMI)とグリア細胞でのklg/Repo/deaat1との因果関係を行動遺伝学的手法により明らかにし、長期記憶学習後の神経活動の沈静化が加齢体では十分でないことを解剖学的解析から明らかにし、神経保護薬を使った行動薬理学的解析からも確認出来た。以上の進捗を鑑みて概ね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

これまでの研究から、長期記憶学習によるklg/Repo/deaat1経路の活性上昇が加齢体では障害されたため、期記憶学習後の細胞外グルタミン酸の取り込みが不十分となり長神経活動の沈静化が起こらず、結果としてLTM-AMIが起こることが分かった。では神経活動が恒常的に上昇することで予想される神経細胞死がどのタイプの神経細胞で起こるのか?細胞死シグナルを抑制すればLTM-AMIは改善するのか?を明らかにする。具体的には細胞死シグナルの鍵となるカスパーゼの活性上昇が起こり、遺伝学的カスパーゼ活性阻害によりLTM-AMIが改善する神経細胞の同定を進める。もし細胞死シグナルが容易に見つからない場合は以下の様にして責任細胞を同定する。klg/Repo/deaat1経路の活性上昇には細胞接着因子Klgを介した神経-グリア相互作用が必須である。そこでキノコ体神経細胞、触覚葉、中心体やコリン作動性神経、グルタミン酸作動性神経、ドーパミン作動性神経、セロトニン作動性神経などでklg遺伝子をノックダウンさせどの神経細胞で長期記憶に障害が現れるか調べる。ついで加齢体では長期記憶障害が現れた神経細胞で長期記憶学習後に神経細胞死シグナルが誘導されるか検証する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Coincident postsynaptic activity gates presynaptic dopamine release to induce plasticity in Drosophila mushroom bodies.2017

    • 著者名/発表者名
      Ueno K, Suzuki E, Naganos S, Ofusa K, Horiuchi J, Saitoe M.
    • 雑誌名

      eLife

      巻: 6 ページ: e21076

    • DOI

      10.7554/eLife.21076.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Shifting transcriptional machinery is required for long-term memory maintenance and modification in Drosophila mushroom bodies.2016

    • 著者名/発表者名
      Hirano Y, Ihara K, Masuda T, Yamamoto T, Iwata I, Takahashi A, Awata H, Nakamura N, Takakura M, Suzuki Y, Horiuchi J, Okuno H, Saitoe M.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 7 ページ: 13471

    • DOI

      10.1038/ncomms13471.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 加齢体では繰り返し学習後の神経細胞過興奮により長期記憶が障害される2016

    • 著者名/発表者名
      松野元美、堀内純二郎、大房京子、増田朋子、齊藤 実
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-12-02 – 2016-12-02
  • [学会発表] グリア細胞からの小胞性グルタミン酸放出は連合学習に必要である2016

    • 著者名/発表者名
      村上佳奈子、宮下知之、菊池絵美、宮地孝明、森山芳則、齊藤 実
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-01
  • [学会発表] ドーパミン放出の標的細胞による新たなゲーティング機構2016

    • 著者名/発表者名
      齊藤 実
    • 学会等名
      第46回日本神経精神薬理学会シンポジウム
    • 発表場所
      ソウルCOEX(韓国)
    • 年月日
      2016-07-02 – 2016-07-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 基礎分子生物学Ⅱ:遺伝子発現制御機構―クロマチン,転写制御,エピジェネティクス―2016

    • 著者名/発表者名
      平野恭敬、齊藤 実
    • 総ページ数
      250
    • 出版者
      東京化学同人
  • [備考] 学習記憶プロジェクト

    • URL

      http://www.igakuken.or.jp/memory/

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公開日: 2018-01-16  

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