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2016 年度 実績報告書

肺腺癌のリネジ特異的生存シグナルの“ウェット”と“ドライ”の統合による全貌解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H02468
研究機関名古屋大学

研究代表者

高橋 隆  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50231395)

研究分担者 宮野 悟  東京大学, 医科学研究所, 教授 (50128104)
梶野 泰祐  名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (50723673)
山口 知也  熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (70452191)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード癌 / 遺伝子発現制御 / シグナル伝達 / システム生物学
研究実績の概要

リネジ生存癌遺伝子TTF-1によって転写活性化されるROR1が、カベオラ構成分子のCAV1とCAVIN1のスキャフォールド蛋白質として機能して、カベオラの形成とカベオラに集積する様々な受容体からの生存シグナル維持に関与することを明らかにしてきた。今年度はさらに、ROR1が、CAVIN3と結合してカベオラ依存的なエンドサイトーシスを制御することを見出した。一方、ROR1とCAVIN3の結合は、CAVIN3の適切な細胞内局在に不可欠であるがカベオラ形成には影響を与えず、クラスリン依存的なエンドサイトーシスにも関与しないことも明らかとした。
また、ROR1の肺腺癌発生における役割を個体レベルで検討すべく、Ror1コンディショナルKOマウスを樹立した。さらに、SP-Cプロモーターを用いて変異EGFRを末梢肺特異的に発現させた肺腺癌モデル系を樹立して、Ror1コンディショナルKOマウスと交配してラインの樹立を進めた。肺腺癌の発生が検出される前から、或いは、マイクロCT画像上において形成を認める時期以降にタモキシフェンを投与してRor1遺伝子をKOし、経時的に肺腺癌の発生と増大に果たすRor1の役割に関する個体レベルの検討を開始した。
一方、TTF-1によって制御されるマイクロRNAの網羅的探索においては、TTF-1の転写活性を反映するTTF-1モジュールを実験的に規定し、TTF-1モジュールと有意な相関を示すmiR-532を同定し、KRASとMKL2を新たな標的遺伝子として見出した。また、TTF-1の結合タンパク質の質量分析器を用いた網羅的探索においては、DNA複製ストレスおよびDNA損傷シグナルに関わる蛋白質群を同定した。さらに、TTF-1がDDB1との結合を介して、DDB1とCHK1との結合を阻害してCHK1を安定化し、DNA複製ストレスに対する耐性を付与することを明らかとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の遂行によって、ROR1が、細胞膜におけるカベオラ形成のみならず、カベオラ依存的なエンドサイトーシスを制御することを見出した。この結果は、これまでにないROR1の新たな分子機能を見出したものであり、肺腺癌においてROR1が果たす役割の多層性を強く示唆する。また、肺腺癌のリネジ生存癌遺伝子TTF-1が担う生存シグナルの解明という観点からは、ROR1がカベオラ依存的なエンドサイトーシスを通じて生存シグナルを制御している可能性が想定されるなど、今後の展開が大いに期待できる成果と言える。さらに、肺腺癌発生においてRor1が果たす役割を個体レベルで検証する試みも、Ror1コンディショナルKOマウスと変異EGFRトランスジェニックマウスの樹立と交配が順調に進んだ。今後の研究成果の蓄積を期待できる状態にある。
その他にも、TTF-1によって転写活性化されるマイクロRNAの探索・同定と機能解析も順調に進んだ。また、TTF-1結合蛋白の網羅的探索を通じて見出したDDB1との結合は、TTF-1が、転写調節因子としての機能以外にも重要な役割を担っていることを示すものであり、非常に興味深い。

今後の研究の推進方策

今年度の研究成果を受けて今後はさらに、ROR1が、エンドサイトーシスにより細胞内に形成されPI3K-AKT軸の生存シグナルを制御するシグナリングエンドソーム形成において果たす役割や、細胞膜上に存在するEGFR等の受容体のターンオーバーを制御するリサイクリングエンドソーム形成における役割等について着目しつつ、ROR1分子が肺腺癌細胞の生存シグナルを担う分子機序の解明を進める。また、Ror1コンディショナルKOマウスと変異EGFRトランスジェニックマウスの交配を継続してライン化し、肺腺癌の発生と増大に果たすRor1の役割に関する個体レベルの検討を、マイクロCTによる経時的な観察や病理形態学的な解析等によって進めていく予定である。また、TTF-1の二面性のある特性に関わる可能性が示唆される予備的検討結果を得ているTTF-1の共役転写因子FOXA2との関連性について、両者を単独或いは共発現を誘導可能な細胞株並びにKO細胞を樹立し、ChIP-seqや網羅的発現解析等を通じた分子生物学的な検討を加えていく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Helicobacter pylori infection is associated with favorable outcome in advanced gastric cancer patients treated with S-1 adjuvant chemotherapy2018

    • 著者名/発表者名
      Nishizuka SS, Tamura G, Nakatochi M, Fukushima N, Ohmori Y, Sumida C, Iwaya T, Takahashi T, Koeda K; Northern Japan Gastric Cancer Study Consortium.
    • 雑誌名

      J Surg Oncol

      巻: 117 ページ: 947-956

    • DOI

      10.1002/jso.24977.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Inactivating mutations and hypermethylation of the NKX2-1/TTF-1 gene in non-terminal respiratory unit-type lung adenocarcinomas2017

    • 著者名/発表者名
      Matsubara D, Soda M, Yoshimoto T, Amano Y, Sakuma Y, Yamato A, Ueno T, Kojima S, Shibano T, Hosono Y, Kawazu M, Yamashita Y, Endo S, Hagiwara K, Fukayama M, Takahashi T, Mano H, Niki T
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 108 ページ: 1888-1896

    • DOI

      10.1111/cas.13313

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Fenton reaction-induced renal carcinogenesis in Mutyh-deficient mice exhibits less chromosomal aberrations than the rat model2017

    • 著者名/発表者名
      Li GH, Akatsuka S, Chew SH, Jiang L, Nishiyama T, Sakamoto A, Takahashi T, Futakuchi M, Suzuki H, Sakumi K, Nakabeppu Y, Toyokuni S
    • 雑誌名

      Pathol Int

      巻: 67 ページ: 564-574

    • DOI

      10.1111/pin.12598

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] TTF-1/NKX2-1 binds to DDB1 and confers replication stress resistance to lung adenocarcinomas2017

    • 著者名/発表者名
      Liu Z, Yanagisawa K, Griesing S, Iwai M, Kano K, Hotta N, Kajino T, Suzuki M, Takahashi T
    • 雑誌名

      Oncogene

      巻: 36 ページ: 3740-3748

    • DOI

      10.1038/onc.2016.524

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Thyroid transcription factor-1-regulated miR-532-5p targets KRAS and MKL2 oncogenes and induces apoptosis in lung adenocarcinoma cells2017

    • 著者名/発表者名
      Griesing, S, Kajino T, Tai MC, Liu Z, Nakatochi M, Shimada Y, Suzuki M, Takahashi T
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 108 ページ: 1394-1404

    • DOI

      10.1111/cas.13271

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ROR1: An Achilles Heel of Lung Cancer.2017

    • 著者名/発表者名
      Takahashi T
    • 学会等名
      24th Asia Pacific Cancer Conference
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 受容体型チロシンキナーゼROR1による生存シグナル維持の分子基盤2017

    • 著者名/発表者名
      高橋隆
    • 学会等名
      第21回日本がん分子標的治療学会学術集会
    • 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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