研究課題
昨年度に引き続き、肺腺がん細胞におけるROR1によるカベオラ依存的なエンドサイトーシスの制御に関わる分子機構についての詳細な解析を行った。生化学的な検討を加えることによって明らかとしたROR1とCAVIN3との相互作用に加えて、共焦点レーザー顕微鏡等を用いた免疫蛍光法による形態学的観察によって細胞内における共局在を明らかとした。そこで、さらにROR1とCAVIN3の細胞内における共局在部位について超高解像度顕微鏡を用いた検討を加えた。その結果、カベオラ依存的なエンドサイトーシスにおける機能的役割との関連性を示唆する、アクチンフィラメント上におけるROR1とCAVIN3との共局在を認めた。ROR1の肺腺がん発生における役割の個体レベルにおける検討に関しては、Ror1コンディショナルノックアウトマウスを樹立し、SP-C肺サーファクタント蛋白遺伝子のプロモーターによって末梢肺特異的に変異型EGFRを発現するSP-C-EGFRトランスジェニックマウスとの交配を進めた。得られた変異EGFRトランスジーンを持ち、ROR1をコンディショナルにノックアウト可能な個体を用いて、肺腺がんの発生前よりタモキシフェンを投与してRor1をノックアウトし、マイクロCTを用いて肺腺がんの発生に対する影響を経時的追う詳細な検討を開始した。これまでに得られた予備的な解析結果は、ROR1のノックアウトによって顕著に肺腺癌の発生が抑えられることを示している。より精密な検討を加えるべく、さらに個体数を増やして解析を加えつつある。
2: おおむね順調に進展している
新たに見出したROR1とCAVIN3との蛋白質間結合が持つ機能的役割について、そのカベオラ依存的なエンドサイトーシスにおける重要性を明らかとすることができた。また、Ror1コンディショナルノックアウトマウスと変異型EGFRトランスジェニックマウスを用いた解析から、肺腺がんの発生におけるRor1の機能的重要性について個体レベルにおいても迫りつつある。本研究で得られた知見は、これまでほとんど分かっていなかったROR1の分子機能の解明につながるばかりでなく、ROR1を分子標的とする今後の研究開発に道を拓くものである。
ROR1の分子機能の解明に、in vitroにおける分子細胞生物学的な解析と、コンディショナルKOマウスを用いた個体レベルの検討の両面から迫っていく予定である。そのために、ROR1のカベオラ構造とカベオラ依存的エンドサイトーシスの維持が、肺腺がん細胞の生存に果たす役割について、さらに詳細な分子細胞生物学的及び生化学的な検討を加える。また、これまでに得られた予備的な解析結果が示す肺腺がんの発生におけるROR1の重要性について、さらに個体数を増やしてより詳細な検討を加える予定である。
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