研究課題
先行事業 “難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究事業”で全国の協力施設から収集された血液検体のうち、膵がんを発症した患者142件と性別・年齢階層を一致させた対照276件において、Infinium Human Methylation 450K BeadChipを用いてゲノム網羅的DNAメチル化解析を行った。前年度までに実装した血球成分組成予測パイプラインを用い、各検体の血球成分組成を予測し、予測された血球成分組成に基づいてDNAメチル化率データを補正した。この補正値を用い、多重検定に対する補正後に症例-対照間でDNAメチル化率が有意に異なる46,924CpG部位を同定した。他方では、前年度までに、非膵がん症例手術材料より得られた正常膵組織22検体と浸潤性膵管がん91検体においてInfinium解析を行っていた。正常膵組織と膵がんの間で多重検定に対する補正後DNAメチル化率が有意に異なるのは、100,495CpG部位であった。血液検体と組織検体の双方でDNAメチル化率が異なる (すなわち膵がん組織検体におけるDNAメチル化異常を膵がん発症前の血液検体において検出し得る)CpG部位のうち、そのDNAメチル化異常が遺伝子の発現異常に帰結し得ることが公共データベースの探索で確認されたCpG部位に特に着目している。着目した遺伝子群には、幹細胞性・細胞増殖・細胞接着等に寄与する遺伝子や既知のがん関連遺伝子が多数含まれていた。本知見より、①環境要因・遺伝素因の影響で長年月の間に血球細胞を含む全身の細胞に惹起されたDNAメチル化異常が、末梢膵管上皮においては発がん促進的に作用し、膵がんの発症に至る可能性がある、②末梢膵管上皮において発がん促進的に働くDNAメチル化プロファイルは、発症前から血球細胞にも成立しているので、血液検体のDNAメチル化検査で発がんリスクを診断し得る、と考えられた。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
2019年5月、研究室独自ページを開設予定。
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