研究課題/領域番号 |
16H02485
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
森 浩禎 奈良先端科学技術大学院大学, データ駆動型サイエンス創造センター, 教授 (90182203)
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研究分担者 |
山田 守 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30174741)
松野 浩嗣 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (10181744)
田村 武幸 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00437261)
片岡 正和 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (90332676)
牧 泰史 大阪医科大学, 医学部, 講師 (60401733)
大橋 菜摘 (斎藤菜摘) 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50287546)
川野 光興 川崎医科大学, 医学部, 講師 (00455338)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分子バーコード欠失株 / 大腸菌 / population / deep sequencing / chemical genomics |
研究実績の概要 |
自然環境下での生命は、化学的、物理的環境変動の中を、周辺に共存する生物種と競合、協調など絶えず相互作用を繰り返し生存する。大腸菌は、その名の由来の様に本来の生存の場は哺乳動物の腸内と考えられるが、実際には、土壌、湖沼等広く分布し、動物体内との間を循環している。その間、宿主生物との相互作用のみならず、周辺のファージや微生物種との相互作用を繰り返し、環境を生き抜く。自然環境下の生命の生存戦略を考える上で、対数増殖期は非常に短く、分裂をしない期間が続くことは、全ての生命に当てはまる。「細胞とは」という基本問題は、全ての細胞増殖期における他生物種との相互作用による生理機能ネットワーク変動の解析である。これまでの機能ネットワーク解明の取組み及び解析技術の格段の進展により、細胞分裂開始から対数増殖期、定常期、死滅期、長期定常期を経て分裂再開する細胞の定量的な解析が可能になった。開発済み網羅的リソースを活用し、種内及び種間の相互作用を、大腸菌遺伝的背景の違いによる相互作用の定量解析手法の確立を行い、細胞の普遍的生存戦略解明を進めた。2017年度においては、分子バーコード欠失株ライブラリーによる長期定常期における各遺伝子欠失株の非致死濃度の抗生物質を含んだ培地及び細胞毒性を持つ化学物質を含む培地でのpopulation変動の解析手法の確立と解析を行った。その結果、1000を超える化学物質と大腸菌遺伝子との高効率な相互作用解析能を示すことができた。さらに、細胞毒性の分子機構が未解明の物質に対して、その分子機構解明にも大きな力を発揮することを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究リソース開発は、必須遺伝子を除く大腸菌全遺伝子の90%以上をカバーする分子バーコード欠失株ライブラリーの構築と確認を終えている。構築したリソースを活用した、全ての欠失株の混合培養液を用いた、分子バーコード解析手法の確立を行なった。DNA修復関連の遺伝子欠失株を除く全ての欠失株を等量ずつ混和した欠失株プールを作製し、共同研究グループと共有を行い、栄養培地中での長期定常状態での培養、抗生物質及び毒性化合物を含む培地での培養を行い、バーコード解析のための解析材料の調整を進めた。調整されたバーコードを含むDNA溶液をdeep sequencerで読み取り、2億readを超える配列データを取得し、各実験でのpopulation情報を得た。長期定常期でのpopulation変動解析から、これまでの長期定常期で優位性を示す遺伝子などの既知情報は矛盾なく取得することができ、さらに多くの遺伝的背景の違う株の変動を捉えることに成功している。また、薬剤あるいは毒性を示す化合物を含む培養液中での各遺伝子欠失株の変動も、同様に定量的モニターを可能にした。DNAに結合することで毒性を示すと考えられる化合物を含む培地中での遺伝子欠失の影響は、クラスター解析の結果、組換え関連の遺伝子欠失が同一のクラスターに存在するなど、既知情報との矛盾なく良好な結果を得ている。 さらに、今後のマウス腸内環境を想定したバーコード解析を行うにあたり、マウス腸内環境を無菌状態にするために Streptomycinの利用が必要となる。そのため、解析を行う大腸菌にはSm耐性を付与しておく必要がある。そこで、Sm耐性を持つ分子バーコード欠失株ライブラリーの構築を開始した。これまでの蓄積を活かし、接合を用いてrpsL変異を構築した欠失株ライブラリーに移動させる方法を確立し、本年度中の完成の目処をつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
リソース開発、Population変動解析、共に非常に順調に進んでいる。長期定常期、非致死的濃度の抗生物質・細胞毒性を示す1000以上の化学物質を含む培地中でのpopulation変動解析も良好な結果を得ており、解析を進めている。 これらはすべて共同研究グループの連携のもとに進めており、非常に順調に進んでいる。今後は情報解析と実験解析との連携がますます重要になってきており、さらに密な連携を進めていく。
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