研究課題
自然免疫は病原体の感染をいち早く察知し炎症反応を引き起こす一方、後に続く獲得免疫を誘導するという極めて重要な役割を果たす。自然免疫における病原体センサーとしては、細胞質局在型のNod様受容体 (NLR)と膜結合型のToll様受容体 (TLR)に大別される。今回我々はNLRとしてNOD2をTLRとしてTLR7の構造解析に成功した。NOD2は典型的なNODドメインと、LRRドメインで構成されたフック型構造をとっており、NODドメインの中央にADPが結合した不活性化型構造をとっていた 。ADPはNBD、HD1、WHDドメインと相互作用しており、NODドメイン内の相互作用を媒介する役割を果たしていた。一方我々はX線結晶構造解析により,TLR7,グアノシン,ポリU鎖からなる複合体,TLR7,ロキソリビン,ポリU鎖からなる複合体の構造,TLR7とR848との複合体の構造を決定した。いずれの複合体の構造も,同じくTLR7サブファミリーに属するTLR8およびTLR9の活性化型の構造とほぼ同じ配置をとる活性化型の二量体であった。この構造をもとにグアノシンおよびポリUによる協調的な活性化機構を明らかにした。TLR7ファミリーにはZ-loopと呼ばれる長い挿入配列があり、この切断がTLR7ファミリーの活性化に必須であることが知られている。なぜZ-loop切断が活性化に必要なのか構造科学的に明らかにした。Z-loopが切断されない変異体を調製し、X線結晶構造解析によってその構造を決定した。Z-loopは二量体界面側を通ることが明らかになった。さらに二量体モデルを構築したところ、Z-loopと大きく接触することがわかった。つまり、Z-loopの切断によりこの立体障害が解除されTLR7ファミリーは活性型の二量体構造が形成可能になることを示した。
1: 当初の計画以上に進展している
当研究の目標であったNLR、TLRに属するタンパク質の立体構造解析に成功し論文としてPublishすることができたため。
他のNLRおよび自然免疫に関わるタンパク質の立体構造解析を行い、機能と構造の相関を明らかにする。
すべて 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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