研究課題
Jmjd6は、鉄と2-オキソグルタル酸、および溶存酸素を共役因子として、リジン残基の水酸化を触媒する酵素である。研究代表者は、Jmjd6を欠損した胸腺では、Aire (autoimmune regulator) 遺伝子のイントロン2のスプライシングが障害され、N末端103アミノ酸残基だけからなる不完全なAireタンパク質(immature Aire)が増加する結果、免疫寛容誘導が正常に作動しないことを見いだした。本研究では、Jmjd6が選択的スプライシングを制御する分子基盤を解明すると共に、その新たな機能を明らかにすることを目的としており、以下の成果を得た。1) in vitro transcriptionにより、Aireのイントロン2およびイントロン1を含むmRNA断片を調製し、これに結合するタンパク質をLC-Ms/Msを用いて同定した。その結果、イントロン2特異的に会合する候補分子を20種類同定した。2) immature Aireタンパク質とmature Aireタンパク質を共発現させると、mature Aireタンパク質の局在が核から細胞質に変化し、プロテアソーム依存性にタンパク質分解を受けることを見いだした。3) 新たに作製したコンディショナルKOマウスをFoxN1-Creマウスと交配することで、胸線上皮細胞特異的にJmjd6を欠損したマウスを樹立した。このマウスを用いて、膵臓に発現する自己抗原に対する免疫寛容誘導の解析に着手した。4) 超霊長類に保存されるGAG配列の生理的意義を解明するため、Aire intron 2の3’スプライスサイトのGAG配列をTTTに置換したノックインマウスを作製した。
2: おおむね順調に進展している
多くの遺伝子改変マウスを作製すると共に、候補会合分子の同定を行った。さらに、immature Aireタンパク質の機能に関して興味深い知見を得ており、研究は順調に進行していると言える。
Jmjd6の生理機能の解明に向けて引き続き精力的に研究を進めると同時に、がんとJmjd6に関する報告が散見されることから、この方面の解析にも注力したい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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