研究課題/領域番号 |
16H02504
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榎本 和生 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80300953)
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研究分担者 |
古泉 博之 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10334335)
冨樫 和也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40450613)
木瀬 孔明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70769611)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 樹状突起 / 軸索 / シナプス / 細胞内シグナル伝達 / 受容体 |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエ感覚ニューロンを解析モデルとして、神経回路の形成と維持の分子細胞基盤の包括的理解を目指している。これまでに感覚ニューロンの受容領域の獲得機構について研究を行い、隣り合う領域間の境界を規定する仕組みは、大きく分けて、ニューロン同士の反発による自己組織化機構と、ニューロンと周辺組織との相互作用という2つの異なる細胞メカニズムに依存することを示している。今年度は、受容領域の背側境界を規定する仕組みとして、感覚ニューロンに発現する新規GPCR(ここでは仮にGPCR1と記載)受容体様分子の着目して研究を進めてきた。GPCR1は感覚ニューロンの樹状突起上に強く発現し、GPCR1を欠損したニューロンでは、背側境界がコントロールに比べて減縮する。さらに、様々な変異を挿入したGPCR1の発現・機能解析から、細胞外ドメインと細胞内ドメインの双方がGPCR1の機能に重要であることが示唆された。したがって、GPCR1は外部から何らかのシグナル因子を受容することにより、受容領域を規定の位置まで伸長させる役割を担うことが予想された。現在、リガンド候補因子、および、その責任組織について検索している。これに並行して、いったん形成した受容領域を維持するエピジェネティック制御メカニズムについて研究を行なっている。ショウジョウバエ感覚ニューロンは、固有の受容領域を形成すると、その後のステージにおいて受容領域を維持するためのメカニズムを発動することを示している。このとき、エピジェネティック制御因子であるポリコーム(Pc)複合体の働きが必須であることを見出している。一方、ショウジョウバエにおいても、個体老化に伴い、徐々に神経変性を起こし、受容領域の減縮が観察される。この老化ステージに同調して、特定のエピジェネティック因子の発現が増強されることを見出した。現在、ゲノム編集法により、この因子のノックアウト個体を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
受容領域の形成と維持に関わる新たな分子細胞メカニズムを見出し、その作動機序の解析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
GPCRについてはリガンド候補因子の絞り込みが重要であると考える。またエピジェネティクス制御については、ノックアウト個体の作成と解析を優先させる。
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