研究課題/領域番号 |
16H02515
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
七田 芳則 京都大学, 理学研究科, 教授 (60127090)
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研究分担者 |
山下 高廣 京都大学, 理学研究科, 助教 (50378535)
今元 泰 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80263200)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光受容 / オプシン / 機能多様性 / 分子メカニズム / モデル動物 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載の研究計画にしたがって、本年度は以下の成果を得た。 1.Opn5mは紫外光感受性の光受容体であり、マウスおよびマーモセットを用いてその脳内視床下部に発現することを見いだしている。ヒトの視床下部での発現を確認するため、Opn5mのN末・C末領域をエピトープとして数種類の特異的抗体を作製した。現在、フィンランドの研究者とヒトの組織の提供に関わるMTAを交わす手続きを進めている。 2.Opn5nは可視光感受性の光受容体であり、哺乳類以外の脊椎動物で網膜の視細胞に発現する。Opn5n遺伝子を複数もつメダカを用いてダブルノックアウト系統を作製したところ、視細胞の明暗での形態変化に影響がでることがわかった。 3.Opn5L1は光受容で不活性化のみするため、reverse photoreceptorとして機能することが考えられる。Opn5L1遺伝子を複数もつメダカで発現部位を確認したところ、脳内のいくつかの領域に発現が確認できた。さらに、メダカのダブルノックアウト系統を作製したところ、回転する縞模様への追従遊泳行動(optomotor response)に影響がでることがわかった。 4.Opn5グループは脊椎動物の系統で4つのサブグループに多様化しており、N端から188番目の残基の変化がこの多様化の基礎になっている、この残基の変化では、Gタンパク質活性化効率の大きな変化はみられないことがわかった。一方、脊椎動物の視覚オプシンへの多様化には113番目の残基の変化が重要であり、その結果としてGタンパク質活性化効率の大きな上昇がみられる。脊椎動物に最も近縁の無脊椎動物であるホヤのオプシンを解析したところ、このオプシンでは113番目の残基の変化が起こっているが、機能は不完全であり、進化的な中間状態の分子特性を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Opn5グループの中でOpn5nとOpn5L1グループについては、それぞれのグループに含まれる複数の遺伝子を持つメダカを実験材料にしてノックアウト動物の作製を試み、成功している。また、それらノックアウト動物を解析したところ、それぞれのグループで生理機能に興味深い影響のでることがわかった。したがって、今後、さらに解析することにより、これらのグループの生理機能が解明されると期待される。 2.Opn5mについては、以前の研究からマウスやマーモセットでは視床下部に存在することを発見し、ヒトでの局在を検討する研究を進めている。特異的抗体の調製を進めるとともに、学内での倫理委員会の承認を得たあと、ヒト視床下部の提供元であるフィンランドの研究者とのMTAを締結する予定である。次年度には実験がスタートできると期待している。 3.Opn5グループと他のオプシングループとの比較研究も順調に進んでいる。本年度は、視覚オプシンの多様化の基礎となっている対イオンについて、ホヤのオプシンを解析したところ、進化的な中間状態と考えられる分子特性を示すことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.申請代表者らはOpn5nグループとOpn5L1グループのそれぞれの遺伝子を複数もつメダカについて、すべてをノックアウトしたメダカを作製し、行動や網膜形態の異常が出ることを観察した。そこで、今後は各グループの複数の遺伝子のうちのどの遺伝子が異常の原因であるかについて、1つの遺伝子のみをノックアウトしたメダカも作製して、解析することを計画している。 2.ヒトの視床下部にOpn5m遺伝子が発現しているかどうかを、フィンランドの研究者と共同して解析する。 3.Opn5グループは視覚オプシンのグループと同様に、脊椎動物の系統で著しく多様化している。我々は多様化の鍵となるアミノ酸残基をそれぞれのグループで同定することを検討しており、実験データが得られ出している。今後この研究をさらに発展させていきたい。
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