研究課題
これまでに我々は多細胞化と性進化のモデル生物群「群体性ボルボックス目」からオス特異的遺伝子“OTOKOGI”(PlestMID)を単離することに成功し(Nozaki et al. 2006, Curr. Biol.16: R1018)、“OTOKOGI”を端としたゲノム解読から卵生殖のボルボックス(Volvox)の雌雄の性染色体(性決定)領域(MT)をゲノム解読し、近縁な同型配偶のクラミドモナス(Chlamydomonas)と比較した (Ferris et al. 2010, Science 328: 351)。その結果、ボルボックスのMTはクラミドモナスの5倍の大きさの1Mbを超える巨大なものであり、その中に13個の雌雄に特異的な新規遺伝子が明らかになり、MTにおけるこれらの進化が同型配偶から雌雄性を獲得する原因となったことが推測された。今回我々は両者の中間的進化段階で同型配偶から異型配偶の進化を橋渡しするヤマギシエラ(Yamagishiella:同型配偶)とユードリナ(Eudorina:異型配偶)の両性の全ゲノム配列を得て、MTの全貌を明らかにした。その結果、ヤマギシエラとユードリナのMT は7-268 kbの小さい領域であり、オス(交配型マイナス)特異的遺伝子はOTOKOGI/MIDだけであった。このことはオス側では1個の性特異的遺伝子だけで異型配偶化が可能であり、卵生殖のボルボックスの段階で新たなる性特異的遺伝子の獲得とMTの拡大が起きたことが推測された(Hamaji et al. 2018, Communications Biology 1: 17)。また、群体性ボルボックス目の祖先形質再構成の解析を実施した結果、多細胞化が有性生殖の進化を促進する傾向にあると示唆された(Hanschen et al. 2018, Am. Nat. 192: E93-E105.)。
2: おおむね順調に進展している
群体性ボルボックス目の全ゲノム比較解析の結果、オス側では1個の性特異的遺伝子だけで異型配偶化が可能であり、卵生殖のボルボックスの段階で新たなる性特異的遺伝子の獲得とMTの拡大が起きたことが推測された(Hamaji et al. 2018, Communications Biology 1: 17)。また、祖先形質再構成の解析を実施した結果、多細胞化が有性生殖の進化を促進する傾向にあると示唆された(Hanschen et al. 2018, Am. Nat. 192: E93-E105.)。
オス/交配型マイナスの遺伝子MID/OTOKOGIが群体性ボルボックス目の雌雄性獲得前後で機能が変化したことが推測され、本遺伝子の下流遺伝子を探る解析を実施する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 8件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 8件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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