研究課題/領域番号 |
16H02518
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野崎 久義 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40250104)
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研究分担者 |
宮城島 進也 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 教授 (00443036)
関本 弘之 日本女子大学, 理学部, 教授 (20281652)
西山 智明 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教 (50390688)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 多細胞進化 / 群体性ボルボックス目 / アストレフォメネ / 全ゲノム情報 |
研究実績の概要 |
多細胞性進化の研究のモデル生物群であるボルボックス系列(volvocine algae)では、平面状群体から球状群体へのボディプランの進化が2つの系統で独立に起こったとされている。このうちボルボックス科(Volvocaceae)は発生過程において、細胞分裂期終了後に細胞の形状変化などによる「反転」という形態形成運動を行ない球状群体を形成するが、もう一方の球状群体系統であるアストレフォメネ(Astrephomene)は発生過程で反転を行なわず娘原形質体の回転で球状群体を形成する。しかし、これら球状群体形成の細胞レベルのメカニズムが球状群体の進化以前にあったものかどうか、すなわち平面状群体をもっていた祖先にあったかどうかは不明瞭であった。今回は、現存するより祖先的な平面状群体をもつゴニウム(Gonium pectorale)とテトラバエナ(Tetrabaena socialis)に着目し、両種の光学顕微鏡タイムラプス撮影による発生の詳細な連続観察と、間接蛍光抗体法による細胞内の構造の観察を行なった。ゴニウムでは細胞分裂期終了後に16細胞からなるカップ状の細胞層が徐々に広がって平面となる様子が、テトラバエナでは細胞分裂期終了後に4細胞からなる胚のうち、斜向かいの2細胞が前後に一度ずれ、ハッチ後に解消される様子がそれぞれ観察された。これら平面状群体を持つ種の胚発生では、アストレフォメネの細胞分裂期にみられる娘原形質体の回転や、ボルボックス科の反転時にみられる細胞の形状変化はみられず、これらの球状群体形成メカニズムがそれぞれの系統での球状群体進化とともに新たに獲得されたものであることが示唆された(Yamashita & Nozaki 2019, BMC Evol. Bop.)。また、アストレフォメネの多細胞化の分子遺伝学的基盤を探るため、本生物の全ゲノム情報を新規に確立した(Yamashita et al. 2019, 第5回国際ボルボックス会議発表)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アストレフォメネの多細胞化による球状群体の細胞レベルの進化が独自に起きたことが明らかになり、論文も出版された。また、アストレフォメネの全ゲノム情報も構築した。
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今後の研究の推進方策 |
今後アストレフォメネの全ゲノム情報のRNA-seqを用いたアノテーションを実施する。これらを独立に球状群体が進化したボルボックス科の生物と比較ゲノム解析を実施して、球状群体の並行進化の分子遺伝学的基盤を探る。
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