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2019 年度 実績報告書

Out of Africa:ホモ・サピエンスのアジア拡散モデルの再構築

研究課題

研究課題/領域番号 16H02527
研究機関札幌医科大学

研究代表者

松村 博文  札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (70209617)

研究分担者 海部 陽介  独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, グループ長 (20280521)
篠田 謙一  独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 研究調整役 (30131923)
斎藤 成也  国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (30192587)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワード先史学 / 人類学 / 形態 / 遺伝 / アジア / 拡散 / ホモ・サピエンス
研究実績の概要

ユーラシア東部へのホモ・サピエンス拡散モデルを展開にいたった形態よる研究成果は、これまでの発掘調査による先史人骨の新資料の収集蓄積とそれにもとづくユーラシア東部のホモ・サピエンス拡散の二層モデルの展開しScientific Report、に公表した。その骨子は先住の採集狩猟民は脱アフリカしたホモ・サピエンスがユーラシア南域を経由し移住してきた集団であり熱帯適応型の形質を維持しているのに対して、現代人の大多数は完新世中期の新石器時代農耕拡散にともなう北東アジア由来の寒冷地適応型の別のホモ・サピエンスの集団に由来するという仮説であり、頭骨形態データにより明確に示唆された。ゲノム研究においても国際共同研究による成果においてSienceに論文が掲載されるに至り、我々が発掘したベトナムの新石器時代マンバック遺跡の人骨のゲノムデータからも二層モデルが支持された。一方、フィールドワークとして先史人骨の新資料発見のために発掘調査をおこなってきたインドネシアのグアハリマウ遺跡については、すでに採取済みの試料を用いて解析に着手した。3次元スキャナーによる頭骨の表面座標形状データを用いた新手法による研究では、従来の線形計測では認識が困難であった後頭部や頭部の輪郭、顔面と脳頭蓋の形態の相関性など極めて有益な解析が進んでおり、アフリカ集団とパプアメラネシア集団の類似性、それらとは隔たるヨーロッパとアジア集団の類似性が具体的に検証されつつあり、二層モデル仮説を支持するための重要な補完データが蓄積されつつある。付随する成果として先史人骨の資料調査をとおして、アジアの基層集団の付随する文化的共通性として、パプア人の風習として知られている燻ミイラ埋葬がアジアでも広域におこなわれていた可能性が検証課題として浮上している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

フィールドワークとして先史人骨の新資料発見のために発掘調査をおこなってきたインドネシアのグアハリマウ遺跡については、新型コロナの影響により継続が困難となっている。スラウェシから発見された新たな更新世人類の形態研究も同様に中断している。そのためDNA分析などはすでに採取済みの試料解析のみを実施せざるをえない状況である。3Dスキャナーによる頭骨の表面座標形状データを用いた新手法による研究も、欧米研究機関へのアクセスが中断しており、既存の限られた資料で解析せざるを得ない状況となっているが一定程度の成果は得ている。

今後の研究の推進方策

形態研究については従来計測法による分析についてはこれまで男性の古人骨標本を用いていたが、女性の新発見の重要な先史人骨について追証をおこなっていく。3次元表面形状データによる解析は、調査の中断で標本数が限定されているが、本研究計画の期間終了までに新手法によるサピエンスの系統解析の結果が得られるものと期待される。新型コロナの感染の終息次第では引き続き欧米研究機関での資料データ採取も継続する。インドネシアのグアハリマウ遺跡の人骨については、これまでに解析済みのミトコンドリアDANにくわえ採取済みの試料を用いて核ゲノムワイド解析をすすめる。また現代人については、アジアのホモ・サピエンスの最初の移住集団との関連が注目されるベッダ人のゲノム解析に着手する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 5件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 頭骨測量数提示欧豪大陸東部史前人群拡散的" 二層" 模式2020

    • 著者名/発表者名
      松村博文, 洪暁純, Charles Higham, 張弛, 山形真理子, Lan Cuong Nguyen, 李珍, 范雪春, Truman Simanjuntak, Adhi Agus Oktaviana, 何嘉寧, 陳仲玉, 潘 建国, 賀剛, 孫国平, 黄胃金, 李新第, 魏興寿, Kate Domett, Sian Halcrow
    • 雑誌名

      南方文物(Nan Fang Wen Wu

      巻: 124 ページ: 226-241

    • 国際共著
  • [雑誌論文] Late Jomon male and female genome sequences from the Funadomari site in Hokkaido, Japan2019

    • 著者名/発表者名
      KANZAWA-KIRIYAMA HIDEAKI、JINAM TIMOTHY A.、KAWAI YOSUKE、SATO TAKEHIRO、HOSOMICHI KAZUYOSHI、TAJIMA ATSUSHI、ADACHI NOBORU、MATSUMURA HIROFUMI、KRYUKOV KIRILL、SAITOU NARUYA、SHINODA KEN-ICHI
    • 雑誌名

      Anthropological Science

      巻: 127 ページ: 83~108

    • DOI

      10.1537/ase.190415

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Author Correction: Craniometrics Reveal “Two Layers” of Prehistoric Human Dispersal in Eastern Eurasia2019

    • 著者名/発表者名
      Matsumura Hirofumi、Hung Hsiao-chun、Higham Charles、Zhang Chi、et al.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 7984-7954

    • DOI

      10.1038/s41598-019-44355-4

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Domestication and large animal interactions: Skeletal trauma in northern Vietnam during the hunter-gatherer Da But period2019

    • 著者名/発表者名
      Scott Rachel M.、Buckley Hallie R.、Domett Kate、Tromp Monica、Trinh Hiep Hoang、Willis Anna、Matsumura Hirofumi、Oxenham Marc F.
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 14 ページ: 1-24

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0218777

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Craniometrics Reveal “Two Layers” of Prehistoric Human Dispersal in Eastern Eurasia2019

    • 著者名/発表者名
      Matsumura Hirofumi、Hung Hsiao-chun、Higham Charles、Zhang Chi、et al.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1038/s41598-018-35426-z

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 韓国加徳島遺跡出土人骨のDNA分析2019

    • 著者名/発表者名
      篠田謙一, 神澤秀明, 角田恒雄, 安達登
    • 雑誌名

      文物年報

      巻: 9 ページ: 167-186

  • [学会発表] Smoked mummy hypothesis: mortuary practices of dismemberment against post-mortem body among prehistoric hunter-gatherers in southern China2019

    • 著者名/発表者名
      Hirofumi Matsumura
    • 学会等名
      第73回日本人類学会大会
  • [備考] 札幌医科大学形態人類学研究室研究紹介

    • URL

      https://web.sapmed.ac.jp/anthropology/research/h16o4i0000000075.html

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公開日: 2021-12-27  

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