研究課題/領域番号 |
16H02530
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大澤 良 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80211788)
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研究分担者 |
佐藤 里絵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (10399371)
原 尚資 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20721426)
近藤 康人 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (30301641)
手島 玲子 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (50132882)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アレルゲンタンパク質 / エピトープ配列 / 遺伝子領域内変異 / 低アレルゲン個体 / ソバ |
研究実績の概要 |
本研究はソバの種子中アレルゲンタンパク質の消失・低減を目指す研究である。本年度は、①他殖性であるソバを自殖化した集団を用い、アレルゲン遺伝子の塩基配列多様性解析による集団内アレルゲン関連遺伝子変異個体の選抜、②選抜個体の食品化学によるアレルゲンの検出・定量解析など同時進行することで、ソバアレルゲン遺伝的変異と生化学的定量値との関連性解析を行うものである。 ソバ遺伝資源内(自殖F4世代185系統)に含まれるFag e 2アレルゲン遺伝子領域内における多様性調査を行った結果、26か所の1塩基多型で構成される16のハプロタイプ、およびこの組み合わせで構成される17の遺伝子型を確認した。またタンパク質群およびFag e 2タンパク質の検出・定量をCBB染色、およびFag e 2のIgEエピトープ配列に対して作製した抗Fag e 2抗体を用いたウェスタンブロットにより行った結果、反応性が極めて強い系統から極めて弱い系統と大きな差異があることが明らかとなった。これらの系統を用いた交配を実施することで、次年度以降に実施予定である遺伝解析のための分離集団を作製した。さらに、他のソバ主要アレルゲンに対する特異的抗体を作製することにも成功した。 Fag e 2遺伝子型と表現型との関連性解析を行った結果、反応性が極めて弱い3系統のすべてを含む一つの遺伝子型が見出されたことから、遺伝子領域内変異が反応性の強弱に関連することが推察された。一方で、認識配列が異なる抗Fag e 2抗体を用いて反応性を再評価した結果、従来の結果と異なる反応性を示す系統が多く確認された。これらの結果は、これまでの抗体に対する反応性の差はアレルゲンタンパク質量の差を示すという考えに対する再考の必要性を強く示す結果であり、従来の抗原抗体法の結果は、単純にアレルゲンタンパク質量の差異を示すものでは無いことが新たに判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.そば遺伝資源においてFag e 2遺伝子領域内において多様な変異を見出したこと、2.抗Fag e 2抗体との反応性は自殖性個体ごとに異なっていることを明らかにしたこと、3.自殖性個体中における、抗Fag e 2抗体との反応性が極めて強い個体と極めて低い個体を用いることで、抗Fag e 2抗体反応性における遺伝解析を実施するための分離集団を作製したこと、4. 他のソバ主要アレルゲン、Fag e 1、Fag e 3、および10kDaアレルゲンに対する特異的抗体を作製することに成功したこと、以上の4点は当初目標通りである。一方で以下に挙げる新たな知見が得られたことから、ソバアレルギー研究の進展のためには今後の対応が必要である。 1.従来の抗原抗体法ではアレルゲンタンパク質量を直接的に定量することが難しいため、従来法の改良や新たな手法の開発が必須である。2.CBB染色法ではFag e 2アレルゲンタンパク質量を直接的に定量することは不能であることが解った。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初計画通りに進展させるとし、③抗Fag e 2抗体反応性における遺伝解析を進めることでアレルゲン性関連遺伝子領域の探索を実施するとともに、選抜系統のアレルギー反応性の臨床試験を実施する予定である。これらに加え、既存の抗原抗体法を改良することでアレルゲンタンパク質の簡易定量法の確立(イムノクロマトやサンドイッチELISAの利用)、あるいは対象タンパク質の精製やHPLCにより直接的にアレルゲンタンパク質量を定量する手法を確立させる必要が生じたため、この2点についても注力する。
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