研究課題/領域番号 |
16H02532
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
辻 寛之 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 准教授 (40437512)
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研究分担者 |
田岡 健一郎 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (00467698)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フロリゲン / イネ / フロリゲン活性化複合体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、フロリゲン活性化複合体の未知の転写コファクターを同定すること、及びフロリゲン活性化複合体の超解像イメージングによる細胞内分布を解明することである。本年度は、未知の転写コファクター同定のための免疫沈降系の開発、及び1分子超解像度イメージングに適した形質転換イネの開発を実施した。未知の転写コファクター同定のための免疫沈降系の開発では、培養細胞内にてフロリゲン複合体を再構築して標的遺伝子を活性化するシステムの最適化を行い、内在の標的遺伝子を活性化させる実験系や、ジーンターゲティングによって導入されたレポーターを活性化させる実験系を開発した。1分子超解像度イメージングに適した形質転換イネの開発では、現在最も明るく超解像度イメージングにも適した蛍光タンパク質mNeonGreenとイネのフロリゲンHd3aの融合遺伝子を発現するイネを開発した。開発したイネは野生型より少し早生になっていたことから、導入遺伝子が正常に機能していることが示唆された。また、フロリゲンの生体イメージングに最も適した共焦点レーザー走査顕微鏡も導入した。イネの茎頂メリステムの観察ではメリステムの細胞由来の自家傾向と蛍光タンパク質由来の蛍光と見分けることが極めて重要であり、特にフロリゲンのように蓄積量が少ないタンパク質の観察ではクリティカルな要素となる。このためには、自家蛍光と蛍光タンパク質由来の蛍光を分離できる分光機能を搭載した顕微鏡が必須となる。本年度これを導入し、イネ茎頂での蛍光の分離も可能であったので、今後これを用いた観察を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、フロリゲン活性化複合体の未知の転写コファクターを同定すること、及びフロリゲン活性化複合体の超解像イメージングによる細胞内分布を解明することである。フロリゲン複合体はフロリゲン、受容体、転写因子から構成され、標的遺伝子のプロモーター上に結合して転写活性化すると考えられているが、現在までに知られている因子には明瞭な転写活性化ドメインを持つものがなく、未知の転写コファクターの存在が示唆されていた。またフロリゲン複合体は核内に構築されると考えられるが、生きた植物の組織内でこれがどのように分布、局在するのかは全くわかっていない。 本年度は、未知の転写コファクター同定のための免疫沈降系の開発、及び1分子超解像度イメージングに適した形質転換イネの開発を実施した。未知の転写コファクター同定のための免疫沈降系の開発では、培養細胞内にてフロリゲン複合体を再構築して標的遺伝子を活性化するシステムの最適化を行った。培養の条件やプラスミドの一過的導入の条件を検討することによって、内在の標的遺伝子を活性化させる、またジーンターゲティングによって導入されたLucを活性化させる実験系を開発した。1分子超解像度イメージングに適した形質転換イネの開発では、現在最も明るく超解像度イメージングにも適した蛍光タンパク質mNeonGreenとイネのフロリゲンHd3aの融合遺伝子を発現するイネを開発した。導入遺伝子の発現を安定化させるために、ADH遺伝子の5'リーダー配列や、HSPのターミネーターを導入した系統も開発した。作成した形質転換イネは野生型より少し早生になっていたことから、導入遺伝子が正常に機能していることが示唆された。本年度に高機能な共焦点レーザー走査顕微鏡を導入したので、これによる精細なイメージングを実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
フロリゲン複合体のコファクター探索では、フロリゲン複合体をBiFC法で固定してIPする方法を試みる。BiFC法によって複合体が解離しにくくなるため、複合体全体の共免疫沈降の効率が向上することが期待できる。 フロリゲンの超解像度イメージングでは、作成した形質転換イネを材料に花芽分化の全過程を通したイメージングを実施する。同時に、より安定した観察を可能にするために、mNeonGreenのコドンをイネに合わせた改変型を導入したイネも作成する。作成した形質転換イネは共焦点レーザー走査顕微鏡で観察したのち、超解像度イメージングによる観察を実施する。
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