研究課題/領域番号 |
16H02533
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
和田 博史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター 水田作研究領域, 主任研究員 (40533146)
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研究分担者 |
野並 浩 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00211467)
恩田 弥生 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (70368463)
中島 大賢 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70710945)
平岡 賢三 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 特命教授 (80107218)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞分子計測 / 温暖化 / 高温ストレス / 水稲玄米品質 / 窒素施肥 / 浸透調節 / タンパク質合成 |
研究実績の概要 |
今年度,閉鎖型人工気象室において白未熟粒(背白粒)の形成を誘導する温暖化環境を再現し,そこで成長中の玄米の白濁・透明化部分を対象に,オンサイトかつセルスペシフィックな水分状態・代謝産物解析を行った.実験材料にはポット稲「コシヒカリ」を供試し,出穂後4日目に窒素追肥した上で出穂後5日目から10日間の高温処理を行った.解析は高温処理の期間中,背白粒の白濁推定領域である玄米の背部維管束周辺の果皮と白濁化推定領域である背側の外胚乳を対象に,各細胞層からピコリットルレベルの細胞液を採取し,これをセルプレッシャープローブエレクトロスプレーイオン化法を用い,前処理なしに試料中の代謝産物の質量分析を行った.同時に,セルプレッシャープローブを用いて各細胞層の水分状態(膨圧)を非破壊状態で計測した.並行して,高温ストレス条件下で継時的に玄米試料を採取,化学固定し,透過型電子顕微鏡を用いて白濁・透明化部分の細胞内オルガネラの微細構造を観察するとともに,タンパク質分析を行い,構築した仮説を検証した.その結果,背白粒形成と窒素施与による白濁化回避のメカニズムについて,仮説を裏付ける有力なエビデンスが得られた. また,動的に分子トレーサーとして窒素同位体(15N)を尿素の形で根圏から施与した上で,上述の細胞分子計測を行い,高温下で白濁化する細胞層のアミノ酸代謝を動的に解析できることが確認された.この方法を用いて,高温耐性の異なる複数の品種を供試し,追肥による品質改善程度の品種間差異を明らかにできる見込みである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉鎖型人工気象室隣接型プレッシャープローブエレクトロスプレーイオン化質量分析を用いることで,高温条件に応答する細胞レベルの代謝産物を前処理なく,かつ,環境(温度等)変化に起因する外乱の影響を完全に排除した上で,成長中の玄米内の白濁化領域の細胞内代謝変化をオンサイト,かつリアルタイムに解析することができた.10月に当研究センターに博士研究員1名(畠山)を採用した.また、同研究センター(合志市)のウルトラミクロトーム・透過型電子顕微鏡を使って,センター内で代謝産物解析と透過型電子顕微鏡解析を行える環境が整ったことから,計画した一連の実験を前倒しで実施している.メカニズム解明については研究初年度で,構築した仮説を裏付ける有力な知見を得るに至っており,順調に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に得られた知見を取り纏め,次年度国際学会で成果を発表するとともに,論文としてとりまとめる.また,高温耐性の異なる複数の品種を供試することで,追肥による品質改善の品種間差異を明らかにする.分子トレーサー,窒素同位体(15N)を用いた動的な代謝産物解析から,仮説の検証を行う.さらに,圃場条件下で再現試験を行うことにより,人工気象室試験の結果を確認する.以上の研究により,細胞生理学的な知見に基づく施肥の効用・品種間差異を明らかにすることで,玄米品質低下の被害低減に向けた品種開発と新たな栽培技術体系の構築に資する.
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