研究課題/領域番号 |
16H02534
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金山 喜則 東北大学, 農学研究科, 教授 (10233868)
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研究分担者 |
高橋 英樹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
渡部 敏裕 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60360939)
加藤 一幾 東北大学, 農学研究科, 准教授 (30613517)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生理障害 / 尻腐れ果 |
研究実績の概要 |
トマトの尻腐れ果は甚大な被害を及ぼす生理障害であるが、その発生機構は十分に解明されていない。そこで本課題においては、尻腐れ耐性を遺伝形質として示す染色体断片置換系統を材料とした遺伝学的アプローチ、カルシウムおよびその他すべてのイオンを網羅的に解析するイオノーム解析と組織特異的なカルシウムの動態を明らかするカルシウムイメージングによる高度な解析アプローチ、さらにオミクスと、部位特異的な遺伝子発現制御が可能なウイルスジーンサイレンシングによるエビデンスの獲得を統合し、世界最大の生理障害の一つである尻腐れ果の発生機構を解明するとともに、克服のための育種素材を提供することを目的とする。この目的達成のための基盤的研究をおこなうが、カルシウムと関わるとされている尻腐れ果の発生機構が未だ未解決である原因としては、適切な遺伝学的解析のための材料が乏しいこと、カルシウムの局在性の精密な分析がないこと、カルシウム以外のイオンのデータが不足していること、オミクス解析が活用されていないことがあげられる。そこで本年度は特に、遺伝学的解析が可能な材料であるトマトの染色体断片置換系統等を用いて、尻腐れの発生と関わる果実成長やストレスとの関連も含めてカルシウムの動態や関連遺伝子の解析をおこなった。その結果、尻腐れの発生要因として重要な果実の成長速度に関わる遺伝子に関する知見を得るとともに、従来の全カルシウム含量でなくアポプラストのカルシウム含量を測定するための条件設定を行い、耐性系統の果頂部の濃度が高い傾向を見出すことができた。さらに、得られた情報を他の手法と統合的に利用するため、カルシウムイメージングやサイレンシングの条件設定等を並行して実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究実施予定のうち、特に尻腐れに関わるカルシウムイメージングについては、実験結果の分析を行い、結果のとりまとめを年度末までに行う予定であったが、期間中、条件設定において予期しなかったばらつきが見られた。そのため、予定より多くの試料について詳細な評価を実施する必要が生じたため、経費を翌年度に繰り越して条件の再設定を行った。現在まで、このような繰り越した項目および他の項目について、特段の進捗上の問題はないため上記の進捗状況とした。
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今後の研究の推進方策 |
染色体断片置換系統の一つであるIL8-3が示す尻腐れ果発生抑制機構の解明を目的として,ここまでの成果に基づいて、尻腐れ果の発生抑制に資する可能性のある遺伝子の発現解析を行う必要があると考えられる。方法はRNA抽出とリアルタイムPCRによる。これまでに尻腐れ果の発生が抑制される要因として果実のカルシウム含量が高いことや果実の肥大速度が遅いこと、あるいはアポプラスト液のカルシウム濃度が高いこと、また、ペクチンメチルエステラーゼ(Pectinmethylesterase,PME)遺伝子の発現を抑制した系統ではアポプラスト液のカルシウム濃度が高く、尻腐れ果の発生が抑制されるとの報告がある。本研究においてもアポプラスト液のカルシウム濃度と尻腐れ果の発生抑制との関連が示唆されたことから、PMEおよびその関連遺伝子に注目する。また、アポプラストとのカルシウム輸送に関わる膜タンパク質の発現が関与している可能性があることから、当該遺伝子の発現等の解析を合わせて行う。さらに、前年度に条件設定を行ったカルシウムイメージング等に関しては統合的アプローチを進めるが、、特に有効と考えられるカルモジュリンを利用したセンサータンパク質を利用したシステムにおいて、尻腐れ果の発生過程におけるカルシウム動態を検証するなどの計画を遂行する。
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