研究実績の概要 |
本応募課題では、イネのソースとシンク能をともに強化し、窒素の利用効率を向上させることにより、多肥に依存しない超多収を狙う革新的なイネの開発をめざすこととしていた。具体的には、まず、ソース能の強化のために、葉身窒素最大の投資先である光合成の炭酸固定酵素ルビスコ(ribulose-1,5- bisphosphate carboxylase-oxygenase; Rubisco)の適量化と効率改善を試み、窒素あたりの光合成機能の効率化を計り、一方では、シンク側からは、窒素あたりの収量性が非常に高い大粒イネ「秋田63号」の有用形質を持つ準同質遺伝子系統を育成し、次にソース能を強化したルビスコ改善イネに交配導入する。同時に、組換え導入も試みる。選抜された優良系統は、光合成とバイオマス生産評価に加え、組換えP1P隔離水田圃場に供し、窒素の施肥量を変えて収量試験を行う予定であった。そこで、本年度はまずは、ルビスコ過剰生産イネの文科省第一種使用の承認が得られたので、隔離水田圃場での栽培準備を進めた。しかし、本研究課題に着手するやいなや、基盤(S)の採択が決定したため、基盤(A)での本課題の研究実施を中止とした。今後は基盤(S)での研究課題として、今年度は、作製済みのルビスコ過剰生産イネに他の光合成機能因子を強化した形質を交配導入から開始し、シンク能強化に向けて、秋田63号由来のすでに同定済みの大粒QTLの高収量性への効果の実証と遺伝子単離を行っていく予定である。
|