これまでにイネのカドミウム集積の品種間差を利用して、幾つかカドミウム集積に関与する新規QTLを検出している。そのうちの一つ、7番染色体に座乗するqCd7についてファインマッピングを行い、候補遺伝子の絞込みに成功した。この遺伝子の発現をカドミウム集積量の異なる両親間で比較すると、差が認められなかった。またこの遺伝子はカドミウムによる誘導がなかった。両親間の配列を比較すると、1塩基の違いによる1アミノ酸の変化があった。しかし、酵母を用いたアッセイでは、両アリルともカドミウムに対する輸送活性を示した。両親のイネを用いて生理学的な解析も行った。その結果、カドミウム高集積品種では、マンガンによるカドミウムの抑制効果が見られたが、カドミウム低集積品種では、この抑制効果はほとんど見られなかった。これらの結果から、この1アミノ酸の変化はカドミウム輸送に対する親和性が低くなっている可能性があり、現在更なる解析を行っている。 ヒ素に関しては、ヒ素集積の異なる3種類のイネを用いて、関連遺伝子の発現量を比較した。その結果、ヒ素低集積品種のOsLsi1とOsLsi2の発現量が高集積品種より低いことが分かった。またケイ酸の吸収量も低くなっていた。これらのことはヒ素の低集積がケイ酸輸送体遺伝子の低発現に起因することを示唆している。
|