アブラナ科およびナス科・バラ科植物の自家不和合性の分子機構解明に向けて、以下の研究を展開した。 1)自己・非自己識別機構の蛋白質構造化学的解明:アブラナ科植物の雌ずい因子である受容体キナーゼSRKの細胞外ドメインの異種発現系の構築を目指して様々なアミノ酸残基改変を行い、比較的可溶性の改変型発現蛋白質を得ることが出来た。一方、ナス科植物の花粉因子であるF-box蛋白質群SLFsに関しては、同様なアミノ酸残基改変を試みたが、発現蛋白質はいずれも凝集してしまい、現時点では有効な改変は見出されていない。 2)自他認識から受精阻害あるいは受精促進に至るまでの分子機構解明:アブラナ科植物の自家受粉時における受精阻害には、グルタミン酸受容体GLRsを介した乳頭細胞内へのCa2+流入が関与することが示唆されている。これを実験的に証明する目的で、GLRsの多重変異体の作出と解析を進めた。ナス科植物の他家受粉時における雌ずい因子S-RNaseの無毒化機構を解明する目的で、雌ずいを伸長中の花粉管内のS-RNaseの挙動について免疫組織化学的解析を進めた。 3)非自己から自己認識への転換機構の解明:ナス科およびバラ科におけるS-RNaseとSLFsとの相互作用解析系の確立に向けて、S-RNase蛋白質の異種発現系による発現条件の検討を進めた。
|