研究課題/領域番号 |
16H02546
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
河岸 洋和 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (70183283)
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研究分担者 |
菅 敏幸 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10221904)
鈴木 智大 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (10649601)
崔 宰熏 静岡大学, 農学部, 助教 (40731633)
平井 浩文 静岡大学, 農学部, 教授 (70322138)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 子実体誘導 |
研究実績の概要 |
キノコを発生させる菌類は,胞子→菌糸→子実体(キノコ)→胞子という生活環を持っている。研究代表者は,30年に及ぶキノコの化学的研究を通じて『これらの生活環の各段階はキノコ特有のホルモンによって制御されている』という仮説を持つに至った。しかし,現時点ではその存在の有無さえ不明である。本研究では菌糸から子実体が発生する段階に注目し,以下の4つの全く異なるアプローチ(課題)から「キノコ共通の子実体発生物質(発茸ホルモン候補化合物)」を明らかにすることを目的とした。1)「子実体発生物質のひとつはステロイド」仮説の証明(課題1),2)「Fruiting liquid(FL)」からの子実体発生物質の探索(課題2),3)フェアリー化合物のキノコにおける子実体発生物質としての可能性(課題3),4)胞子からの子実体発生物質の探索(課題4)。 平成28年度は以下のような結果を得た。 1)「子実体発生物質のひとつはステロイド」説の証明:子実体発生ステロイドの候補のひとつであるchaxine類がキノコに内生していることを証明するため,各種キノコ類を抽出し,粗分画後LC-MS/MSに供したところ,約10種のキノコにおける内生を確認した。2) Fruiting liquidからの子実体発生物質の探索:ヤマブシタケFLから得られた物質のエノキタケに対する子実体誘導活性を発見した。3)フェアリー化合物のキノコにおける子実体発生物質としての証明:フェアリー化合物がマツタケ菌糸に対して成長促進活性があることを発見した。4) 胞子からの生活環制御分子の探索(課題4):ヤマブシタケの胞子から新規物質の精製,構造決定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4小課題の全てにおいて以下のように計画通り研究が進行した。 1)「子実体発生物質のひとつはステロイド」説の証明:子実体発生ステロイドの候補のひとつであるchaxine類が約10種のキノコにおける内生を確認した。2) Fruiting liquidからの子実体発生物質の探索:ヤマブシタケFLから得られた物質のエノキタケに対する子実体誘導活性を発見した。3)フェアリー化合物のキノコにおける子実体発生物質としての証明:フェアリー化合物がマツタケ菌糸に対して成長促進活性があることを発見した。4) 胞子からの生活環制御分子の探索(課題4):ヤマブシタケの胞子から新規物質の精製,構造決定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の研究を継続し,進行に合わせて以下の研究を行い,歴史上初めての「キノコ共通の子実体発生物質(発茸ホルモン候補)」の存在を証明する。 1)「子実体発生物質のひとつはステロイド」仮説の証明(課題1): Strophasterol類とchaxine類を全合成し,その誘導体を含めて,子実体形成に及ぼす効果を検証する。 2)「Fruiting liquid」からの子実体発生物質の探索(課題2):活性物質の構造が明らかになれば,課題1と同様の方法で研究を遂行する。また,他のキノコからもFLを採取し,各種キノコのFL中に共通に存在する成分であるか否かを確認する。 3)フェアリー化合物のキノコにおける子実体発生物質としての証明(課題3):フェアリー化合物の植物生長剤としての開発が国内外の企業で進んでいる。既に,コメ,コムギの増収効果の圃場での検証実験が行われている。現在市販されているキノコ(シイタケ,エノキタケ,ブナシメジなど)の商業的生産への可能性を探るべく,活性物質の効果の詳細(最適施与時期,濃度など)を検討する。また,フェアリー化合物の類縁体を合成し,構造活性相関を検討し,さらに高活性な化合物を創製する。 4)胞子からの生活環制御分子の探索: 各菌の胞子からの子実体発生物質の単離,構造決定,生合成経路解明,活性発現機構解明を行う。
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