研究課題/領域番号 |
16H02551
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河田 照雄 京都大学, 農学研究科, 教授 (10177701)
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研究分担者 |
後藤 剛 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10550311)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 食品 / 肥満 / 褐色脂肪 / 白色脂肪 / ベージュ細胞 / メタボリックシンドローム / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
生体には白色と褐色の2種類の脂肪細胞が存在する。白色脂肪細胞(白色脂肪)は、数、量共に多く白色脂肪組織(体脂肪)を形成し、エネルギーの貯蔵・放出を行う。一方、褐色脂肪は、少量しか存在しないが高い脂肪代謝活性と熱産生能力を持つ。褐色脂肪はミトコンドリアに富み、そこに存在する特異的分子(脱共役タンパク質、UCP1) によって、細胞内の脂肪酸を酸化分解し熱に変換する。UCP1は、エネルギーを熱として放散する分子であり, エネルギー消費の自律的調節に寄与している。 褐色脂肪細胞(褐色脂肪)は、熱産生を専門に営む唯一の細胞であり、活発に脂肪を消費し熱に変換する。褐色脂肪組織の熱産生能力は、他の組織のおよそ100倍と格段に高い。褐色脂肪は生体で熱産生を専門に営む唯一の細胞である。褐色脂肪は, ヒト新生児では生命保護のための体温維持機構の主役として極めて重要な役割を担っている。成人では褐色脂肪の減少と機能低下は肥満関連の各種病態の発症と強く相関する。また、現在社会的課題となっている「健康寿命の延伸」には男性においては肥満・メタボリックシンドロームの改善が最も重要であるとされる。その「退縮」と「活性低下」は、いわゆる「中年太り」の主要因となる。また、肥満や高脂肪食により、遺伝子発現の抑制をもたらすDNAのメチル化(いわゆるエピジェネティクス)が過剰となり、糖尿病の発症要因となる。本研究においては、褐色脂肪の退縮と活性低下機構について、「食品摂取」と「代謝物変動」の視点から褐色脂肪特異的遺伝子のエピジェネティクス解析を行い、詳細な発生機構を解析することを目的としている。これにより、新たな視点からの肥満是正の解決策を見出し、糖尿病などの疾患の予防・改善や健康寿命の延伸に役立てる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は研究開始初年度にあたり、当初の計画5項目のうち、(1) 褐色脂肪退縮・機能低下モデルマウスの作製、(2) 既に作製したUCP1蛍光タンパク質発現Tgマウスからのベージュ株化細胞の樹立、の2項目について計画通り実験が推移いしており、上記の自己点検による評価区分を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策は、応募者のこれまでの研究成果を発展させ、熱産生機能を持つ褐色脂肪の退縮と活性低下機構を個体および細胞レベルで解析し、褐色脂肪の有用特性を活用するための基盤研究の確立を目指すことにある。そのために、下記の5項目の研究方策を予定している。既に下記の(1)および(2)は実施できており、今後は、残りの3項目に取り組む方針である。 (1) 褐色脂肪退縮・機能低下モデルマウスの作製、 (2) 既に作製したUCP1蛍光タンパク質発現Tgマウスからのベージュ株化細胞の樹立、 (3) 褐色脂肪特異的遺伝子のエピジェネティック解析法の確立、 (4) 本解析法によるマウスおよびベージュ株化細胞を用いた褐色脂肪の退縮・機能低下に関わるDNAメチル化機構の解明、 (5) DNAメチル化機構を促進あるいは抑制する食品因子および体内代謝物の特定を行う。
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