研究課題/領域番号 |
16H02554
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
後藤 晋 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60323474)
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研究分担者 |
北村 系子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00343814)
内山 憲太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40501937)
久本 洋子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60586014)
津山 幾太郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80725648)
石塚 航 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部林業試験場, 研究主任 (80739508)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光合成 / SNPマーカー / 標高適応 / 南限集団 / GWAS / 縦横比 / 光合成 / PAM |
研究実績の概要 |
・植栽地予測モデルの構築では、データの揃っている5試験地のデータをもとに局所適応の有無を検証した。樹高と生存率から材積に関わるパラメータを算出し、パフォーマンスを比較した結果、特に厚岸では自生地のものが最も良く、環境が離れるほどパフォーマンスが落ちる自生地の有利性が検出された。 ・適応的遺伝子候補の抽出では、光合成パラメータや生理形質についてQTL解析を行い、光合成活性に連鎖するSNPマーカーを検出した。これらのマーカーは、ATP合成などにも関連しており、さらに追及する必要がある。また、標高別産地試験地からサンプルを取り、解剖学的、生理学的な調査を行った結果、高山適応で重要な形質として、水分ストレスを緩和する形質というよりは、雪礫などに当たったときの物理的障害への耐性を高めるような形質が獲得されている可能性が示唆された。 ・相互移植試験地については厚岸の試験地で調査を行い、産地の気象条件と関係する形質として、葉の縦横比、樹皮と木部の直径比などが挙げられた。産地の気象条件として、年平均気温、夏季と冬季の降水量などが挙げられた。材質についても、心材のピロディン値などを測定したが、明瞭な地域変異は見られなかった。ddRAD-seqで1万以上の良質なSNPデータを得ることができ、ゲノムワイドアソシエーション解析を行った結果、いくつかの形質で有意なSNPが検出された。 ・天然集団の集団遺伝解析では、多数のSSRマーカーによって解析をした結果、南限の集団の遺伝的多様性が低いこと、また遺伝的組成がやや異なることは分かったが、形質の分化に比べると、北海道のトドマツは遺伝的には非常に似ていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
・植栽適地予測モデルについては、紙媒体のデータを起こすところから行っているが、データ化と個体ベースの紐づけができるようになった。モデルの構築についても、ベイズ推定や回帰モデルなどの目算が付いている。 ・生理形質・解剖学的形質についてQTL解析を行い、特に光合成効率に関わるPAMで得られるYield(Ⅱ)という形質で有意なQTLを検出できた。さらに、TodoFirGeneというトドマツの遺伝子カタログデータベースを明治大学、森林総研と開発することができ、得られた塩基配列からトドマツにおける遺伝子発現が予測できるようになったことは極めて有意義であり、当初の計画以上の進展をしているといえる。 ・相互移植試験地のデータについても、これまでに測定されてこなかった表現型形質を扱っており、それらをアソシエーション解析するための十分なSNPマーカーも得られている。 ・中立的な遺伝マーカーで解析している天然林の集団遺伝解析も、25集団×50個体というかなり量的に多いサンプルサイズで解析を行い、遺伝的な構造がないことを確認できた。非常に大きな成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
植栽適地予測モデルについては、10年までしかデータのない4つの試験地についても解析を行い、どのような産地を今後、どこに植栽すればよいかを考える基礎資料とする。 今後、少雪地である厚岸と対照的である多雪地の美唄でも同様の相互移植試験地の調査を行い、やはり同じ形質がホームサイトアドバンテージに効いているのかを確認する。 適応的遺伝子の探索については、QTL解析、GWAS解析から得られたSNPについて、天然林の遺伝子頻度分布を見ることでデモグラフィックな適応的遺伝子の分布を調べる。 天然林の集団遺伝学的解析については、さらにマーカー数を増やすとともに、全体的な取りまとめに向けた準備を進める。
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