研究課題
(1)シカ密度、体サイズと体重、植生:洞爺湖中島において、シカ80頭(オス36頭、メス46頭)を捕獲して、体サイズの計測、栄養状態および繁殖状況の評価、胃内容の分析を実施し、低密度下に伴う個体群の質の向上を明らかにした。また、センサーカメラ調査によって継続した捕獲がシカの分布に影響を与え、個体数推定精度の低下をもたらせたことが示唆された。(2)シカ柵の機能、植生、シードバンク:阿寒地域の天然林内のシカ排除柵内外(7か所)において、標識付した稚樹202個体の追跡調査から、稚樹の更新に対するシカの採食による負の直接的効果と、ササの被度低下を通じた正の間接効果が明らかとなった。防鹿柵の内外でのシカの食害が草本植物が生産する種子の質に及ぼす影響について、現地調査・室内実験を行い、シカの食害により草本植物が生産する種子を小型・軽量化すること、および発芽率が高まることでシードバンクへの蓄積が減ることを明らかにした。(3) 腐食連鎖構造とシカ生息密度:ニホンジカの生息密度の異なる環境において、食糞性コガネムシの幼虫期の利用する糞の獣種を調べた。その結果、ニホンジカの生息密度が高くなるにつれ、大型の食糞性コガネムシはニホンジカの糞を高い割合で利用し、他の獣種の糞を利用する割合が低下することが明らかになった。(4)土壌生態系への影響:2019年に発生した台風19号を含む大規模土砂移動現象とその際の土砂量の評価を実施した。また、流域スケールのシカ柵の設置による植生回復過程のモニタリング結果から、植生の回復しやすい箇所を特定し、その要因を解明した。とくに斜面脚部では、土壌侵食による種子流出なども予想され、植生回復が遅いことが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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