研究課題/領域番号 |
16H02562
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜崎 恒二 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80277871)
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研究分担者 |
岩本 洋子 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (60599645)
高見 英人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海底資源研究開発センター, 上席研究員 (70359165)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微生物 / エアロゾル / 海洋 / マイクロレイヤー / 雲凝結活性 / メタゲノム |
研究実績の概要 |
今年度は,金沢大学附属臨海実験施設に1ヶ月間(10/20-11/20)滞在し,能登半島北東部に位置する九十九湾を観測フィールドとして,海水,SMLとこれに由来するエアロゾルの直接的な比較を行うための集中観測を行った.実験所の桟橋と湾内の2カ所で,1ヶ月の滞在期間中に複数回の観測を行い,海表面マイクロ層(SML)用のドラムサンプラーと現場型海水面エアロゾルサンプラーによるサンプリングと雲凝結活性の測定を行った. (1)海表面マイクロ層とエアロゾルの同期的サンプリング:微生物動態解析用の試料,海水とエアロゾルの生物・化学分析用の試料を採集した.これまで,クロロフィルほか一部の有機物分析が終了し,現場で連続測定したエアロゾル粒子数,粒子サイズ,雲凝結活性のデータと合わせて予備的な解析を行った.プロジェクトの紹介と予備的な成果報告のため,第10回バイオエアロゾルシンポジウムで口頭発表を行った. (2)エアロゾルの雲凝結活性の測定:現場型海水面エアロゾルサンプラーを測定装置に連結し,雲凝結活性,エアロゾル粒子数,粒子サイズを測定した.さらに,異なる過飽和度における雲凝結活性の変化からエアロゾル中に含まれる有機物の平均体積割合を推定した.これらの成果を東京理科大学研究推進機構総合研究院大気科学研究部門第1回成果報告会でポスター発表した. (3)海表面マイクロ層とエアロゾルの微生物の代謝機能ポテンシャル解析:実際の解析データは未だないため,既存のメタゲノムデータを用いて,多変量解析手法やネットワーク解析手法による代謝機能の比較アルゴリズムの検討を行った.また,ホモロジーサーチエンジンGhostXを搭載することによるMAPLEシステムの高速化と生理代謝機能の可視化ツールの開発を行った.第10回バイオエアロゾルシンポジウムでは,高見が招待講演を行い,これらの解析手法を紹介した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では,初年度は海表面マイクロ層(SML)用のドラムサンプラーと現場型海水面エアロゾルサンプラーを用いて観測条件など試料採集方法の検討を行う予定であったが,予定よりも早く条件設定が確定した.そこで,次年度に予定していた現場での集中観測を秋に実施し,研究計画を前倒しすることができた.また,海表面マイクロ層より分離した細菌の全ゲノム解析を行った結果をゲノムアナウンスメントとして公表した(研究業績欄に記載).さらに,金沢大学の大気観測グループ(松木准教授)の協力を得ることにより,雲凝結活性に加えて重要なパラメータである氷晶核活性の測定データが加わる他,集中観測のバックグランドデータとして能登半島での大気連続観測データを参照できることとなった.これらの追加的なデータにより観測データの充実が図られ,計画した内容を上回る成果が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,昨年度実施した観測試料の解析を行う他,学術研究船白鳳丸に乗船し(8/12-10/5),太平洋亜熱帯海域の東西横断観測を実施する.水中,SML,エアロゾルのバクテリア・アーキア群集の解析と各種環境パラメータの測定を行う.バクテリア・アーキア群集については,16SrRNA遺伝子をPCR増幅し,超並列シーケンサーでの大量シーケンスによる群集構造解析(16Sアンプリコン解析)を行う.水中環境パラメータとして,フローサイトメトリによる微生物計数,塩分,クロロフィル,有機物,栄養塩濃度の測定を行う.同時に,エロゾルの粒径分布,化学組成(無機イオン成分,有機成分),粒子形態を測定する.
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備考 |
本年10-11月に能登臨海実験施設で実施した集中観測期間中に,北陸放送から「波の花」(海からのエアロゾル生成と関連がある)に関する取材を受け,その内容が12月に放映された.
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