研究実績の概要 |
工業製品などを対象とした先行研究では、商品の値段は需要と供給の関係で基本的に決まる等とされる。しかしながら、この議論は水産物には正確には当てはまらない。本研究では水産物の価格形成メカニズムを解明し、国際的な漁業経済分野の学術的な発展に貢献するとともに、漁獲物の価格が不安定なことで生じている社会的な課題解決を図ることを目的としている。 本年度は、福島原発事故後における水産物に対する消費者意識の時系列変化を分析した研究を行い、震災直後の2012年では放射性物質への忌避が強い一方で被災地を応援する購買意欲も高かったものが、2015年及び2018年では放射性物質への忌避は若干弱まったものの、一方で被災地を応援する購買意欲は更に大きく弱まっているなどの状況が判明し、この一部を論文として発表した(Suzuki, Oishi, Kurokura, and Yagi 2018)。また、北海道産の天然シロザケとノルウェー産の養殖サーモンに対する消費者による評価を分析した論文(Mochizuki, Oishi, Miyakoshi, Yagi 2018)、東南アジアのエコラベルに関する調査結果に関する論文(Sopha, Yagi, Ishihara 2018)、日本産水産物に対するシンガポール住民の嗜好性に関する論文(阪井、家根橋、ユー、八木 2018)、三重県の産地水産物市場における価格分析結果に関する論文(阪井、成尾、鈴木、八木 2018)、放射性物質の調査をサンプル調査とするより全量調査とする方が消費者による水産物への支払い意思が高くなることを示した論文(Sakai, Nakamura, Yagi, Oishi, Suzuki, Kurokura 2018)の、合計6本の査読論文を出版するとともに、7本の無査読の総説や書籍記事などを出版した。
|