研究実績の概要 |
本研究は、消費者調査や市場統計分析などを通じて水産物価格形成メカニズムを解明しようとする内容である。一般的に経済学の教科書では、商品の値段は需給関係で基本的に決まり、更に国民所得や代替物の有無が関係するとされる。しかしながら、この議論は品質が均一な工業製品を仮定しており、自然条件等によって品質にばらつきがでる水産物には正確には当てはまらない。そこで本研究では水産物の価格形成メカニズムを解明し、学術的な貢献をするとともに社会的な課題(消費者の魚離れなど)の解決を図ることを目的としている。 2020年度は、総務省家計調査データを活用し、日本全国の水産物消費の傾向を精査する研究を行った。具体的には消費の経年変化が比較可能な2000年から2017年までのデータを用い47都道府県で分析したところ、(1)全国の中でも瀬戸内海に面した都市では比較的多様な魚介類が消費されていたが近年この多様度が低下(1%水準で統計的に有意)した点、(2)消費される魚介類の多様度がもともと低い都市(札幌、青森、長野、前橋、甲府、静岡)でも近年その多様度は更に低下する傾向が見られた点、(3)かつては西日本でブリが、また東日本でサケが多く消費される傾向にあったものが近年では平準化された点などが判明し日本水産学会誌で出版した(大石ら2021)。更にインドネシアにおける養殖エビの養殖業者等を対象とした調査では、養殖業者の優先事項は養殖池のインフラ整備などでありエコラベルが優先度は低い傾向などを見出した(Azizah et. al., 2020)。また、バングラデシュにおける栄養摂取データを分析し、水産物の価値としてマイクロニュートリエントの価値が重要である点などを見出した(Akter et al., 2021)。これらは研究成果を国際ジャーナルで発表しており、学術的貢献は達成できたと考えている。
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