研究課題/領域番号 |
16H02577
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西村 伸一 岡山大学, 環境管理センター, 教授 (30198501)
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研究分担者 |
柴田 俊文 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (30342546)
小松 満 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (50325081)
吉田 郁政 東京都市大学, 工学部, 教授 (60409373)
珠玖 隆行 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (70625053)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地質統計学 / ため池 / 電気式コーン貫入試験 / スウェーデン式サウンディング / 物理探査 / 電気探査 / 表面波探査 / UAV |
研究実績の概要 |
老朽化した土構造物は,内部の情報が不明確で精度の良い照査が実施できる状況ではない.性能照査の精度を上昇させるためには,簡便で高密度な現地試験が必要で,サウンディングと物理探査が有望である.本研究では,これらの手法を効率化,高精度化し,それぞれの情報を合成する技術を開発する.一方,近年,三次元計測技術の進展が著しく,構造物の三次元モデル化が容易になりつつある.本研究では,現地試験による内部調査結果と三次元計測結果を統合して,効率的な三次元解析を実施し,土構造物の性能照査を高精度化する.この目的に対する,平成28年度の成果は以下のようである.(1)新しいサウンディング技術の提案:本研究では,従来のスウェーデン式サンディング装置(SWS)に,摩擦音による地層同定機能を付加したSWS(岡山大学方式SWS,OSWS)の開発を進めた.平成28年度は,室内試験機を用いた貫入器の基礎実験に専念した.(2)高精度物理探査手法およびトモグラフィーの提案:物理探査手法としては,表面波探査と電気探査を実施した.平成28年度は,これら2つの試験結果のクロスプロットを検討した.(3)サウンディング結果と物理探査結果の合成による構造物内部可視化技術の開発:28年度は,主に,既存のサウンディング(CPT, SWS)を実施し,その結果と,表面波探査結果(SWM)を合成するためのソフトの改良に取り組んだ.(4)三次元計測と内部情報を結合した三次元モデル化:UAVを用いて,形状を計測するための基礎的な実験を行った.ため池堤体に於いて,三次元計測を実施し,ため池堤体の三次元モデル化を行った.(5)応答曲面法による効率的な氾濫解析に基づくリスク評価手法の提案:有限体積法による氾濫解析とリスク評価までの一連の計算プロセスを効率化する方法として,応答曲面法を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下記の通り,予定通りの研究項目が進捗しているため. (1)新しいサウンディング技術の提案:代表者のグループでは,土被り圧相当の拘束圧を負荷できるサウンディング試験用密閉容器を試作しており,同時に実施する三軸圧縮試験の結果を比較することにより,サウンディング結果と強度定数のキャリブレーションを行うことができる.本研究では,従来のスウェーデン式サンディング装置(SWS)に,摩擦音による地層同定機能を付加したSWS(岡山大学方式SWS,OSWS)の開発を進めた.平成28年度は,室内試験機を用いた貫入器の基礎実験に専念した.(2)高精度物理探査手法およびトモグラフィーの提案:物理探査手法としては,表面波探査と電気探査を実施した.平成28年度は,これら2つの試験結果のクロスプロットを検討した.最終的に,三次元逆解析によって,弾性波速度分布を同定しようとしているが,今年度は,基礎的振動解析を実施して,表面波探査の数値解析モデルのモデル化に努めた.(3)サウンディング結果と物理探査結果の合成による構造物内部可視化技術の開発:サウンディング(CPT, SWS)を実施し,その結果と,表面波探査結果(SWM)を用い,合成のためのソフトの改良に取り組んだ.(4)三次元計測と内部情報を結合した三次元モデル化:平成28年度は,UAVを用いて,形状を計測するための基礎的な実験を行った.ため池堤体に於いて,三次元計測を実施し,ため池堤体の三次元モデル化を行った.(5)応答曲面法による効率的な氾濫解析に基づくリスク評価手法の提案:ため池および河川の破堤破堤について,有限体積法による氾濫解析を行い,被害算定を行う.これらの挙動解析からリスク評価までの一連の計算プロセスを効率化する方法として,応答曲面法を開発した.
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今後の研究の推進方策 |
今後下記の計画で研究を推進する. (1)新しいサウンディング技術の提案:平成29年度以降,OSWSの現地での実証試験を実施する.試験結果から問題点を抽出し試験器を改良する.また平成29年度には,GPS搭載クローラの作製を行う.斜面上での貫入試験のため,角度を変えて鉛直下向きに正確に貫入する機能を有するものを開発する.クローラによって,ため池堤体の斜面を試験器が移動することが実現し,このことが,堤体の縦断・横断方向の高密度試験を可能とする.また,車体はGPSによる測地機能により測定点を自動検出し,無線LANの実装によりリアルタイムでデータを送受信する.これらの機能により試験箇所を即時に判断し,移動の自動化により,短時間で精度の良い試験が実施可能となる.(2)高精度物理探査手法およびトモグラフィーの提案:平成28年度に続いて,物理探査手法のソフト開発を行う.ソフトの完成後,実構造物での探査を開始する.平成29年度から,堤体の透水性の空間分布を推定するために,電気式コーン貫入試験結果と透水係数との関連を明らかにするべく,コーン貫入試験値と透水係数が同時に計測できる試験装置を開発し,実験を行う.(3)サウンディング結果と物理探査結果の合成による構造物内部可視化技術の開発:平成28年度から進めてきたソフト開発を継続する.(4) 三次元計測と内部情報を結合した三次元モデル化と可視化:平成29年度は三次元計測と研究(3)による内部可視化データを結合し,三次元解析モデル(三次元有限要素など)を作成するツールを開発する.(5) 効率的な三次元動的安定解析・侵食解析および氾濫解析に基づくリスク評価手法の提案:平成28年度から引き続き三次元有限要素法および粒子法と有限体積法による氾濫解析を結合し,応答曲面法によってリスク評価する手法の開発を進める.
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