研究実績の概要 |
当初、マイクロ流体デバイス技術を活用する東海大学工学部・木村啓志(湘南キャンパス)に人材を送り、牛トロホブラスト細胞と子宮上皮細胞の着床とくに接着から密着過程を再現しようとした。コロナ禍のためにラボの人員派遣に制限がかかり、マイクロ流体デバイスでの証明は困難となった。そこで、牛細胞でありながらより密着度の強いトロホブラストF3細胞と子宮上皮細胞を様々な条件下で培養すると、接着度の異なる状況が出来ることが判明した。さらに密着度の異なる細胞群をそのまま固定包埋できる技術を東京・ジェノスタッフ(株)から協力いただいたため、マイクロ流体デバイスにほぼ匹敵する精度で両細胞の密着過程を再現することが出来た。 一方、子宮内遺伝子発現やタンパク質解析、さらに子宮灌流液の解析から妊娠が成立中の子宮内アミノ酸の動態や、不受胎とくに早期胚死滅が起こるときのタンパク質(SNX5)を特定した。 これらのデータから、反芻動物において、妊娠着床が進行するためには胚トロホブラスト細胞の接着開始後から、がん細胞の転移で明らかになった「上皮間葉系転換」がトロホブラスト細胞で起こること、それが起こり始めるとトロホブラスト細胞同士の融合による2核や多核細胞の形成、2核以上の細胞からの妊娠関連糖タンパク質(pregnancy associated glycoprotein, PAG)の発現が起こることにより、妊娠着床が進行することを明らかにした。さらに、その間に発現するmiRNAやlncRNAの機能も明らかにすることが出来た。
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