研究実績の概要 |
牛白血病ウイルス(BLV)はB細胞性腫瘍である地方病性牛白血病を引き起こすレトロウイルスで、世界中に蔓延し大きな経済的被害を与えている。宿主遺伝子に組み込まれたBLV遺伝子のコピー数として表されるBLVのプロウイルス量は、病態進行およびBLV伝播リスクを評価する基準として有用な指標である。本研究では、プロウイルス量と相関する宿主遺伝子を検出するため、444頭の黒毛和種牛のゲノム遺伝子を用いて、プロウイルス量の測定および全ゲノム一塩基多型(SNP)タイピングを行った。444頭の黒毛和種を、低プロウイルス量(0 < Provirus ≦ 13,819コピー/105細胞, 266頭)、中プロウイルス量(14,237 < Provirus ≦ 40,698コピー/105細胞; 85頭)、高プロウイルス量(42,605 < Provirus ≦132,230コピー/105細胞; 93頭)の3群に群分けした後、低および高プロウイルス量個体の比較を行った。チップ上の54,001SNPのうち、本研究のサンプルで、コール率>99%, マイナーアリル頻度>1%、Hardy-Weinberg平衡 p>0.001を満たしたSNPマーカーが32,919 SNP検出され、そのゲノムインフレーション因子(λGC)は1.021であった。続いて相関解析によりプロウイルス量と有意に相関するSNPを検索したところ、23番染色体上のウシ主要組織適合遺伝子(BoLA)領域内から2カ所(rs29026690とrs17872126)、22番染色体上のCNTN3遺伝子内から1カ所(rs110616206)検出された。本研究により、これまでわかっていたBoLAクラスII遺伝子に加えて、新たに3つのSNPsがプロウイルス量と相関する遺伝子多型として検出され、BLVの宿主因子による病態進行予測や感染源となるリスクの判定などをより精密に実施する事が可能となった。
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