研究実績の概要 |
今年度、以下のような具体的研究成果が得られた。 1)アワヨトウ幼虫に対するN-acetyltyrosine(NAT)のストレス耐性増強活性は1~0.01 micromol/larva注射した場合に観察されるが、1 nmol/larva では有意な効果は見られなかった。そこで、抗ストレス性サプリメント成分として認知されているGABA, L-theanine, L-ornithine, N-acetylglucosamine等をNATとの混合液としてアワヨトウ幼虫に注射し4時間後に44度/1時間という致死的熱ストレスを与えてその効果を調べた。その結果、 NATとN-acetylglucosamine混合液のみ、各々の濃度が1~0.1nmol/larvaという低濃度で生存率の上昇が見られた。したがって、N-acetylglucosamineはNATと共に投与することにより、アワヨトウ幼虫に対し相加的効果を示すことを証明できた。 2)キイロショウジョウバエ幼虫を用いたNATの生理機能解析においても、アワヨトウ幼虫同様のストレス耐性増強活性が確認できた。更に、NATを経口摂食させた幼虫において、脂肪体細胞で抗酸化酵素(catalase, SOD1,2)遺伝子の有意な転写レベルの上昇が検出できた。 3)予め1.5 mg/mlのNAT水溶液を24時間飲ませたマウスと水のみを飲ませた(コントロール)マウスに拘束ストレスを与えた。その結果、NATを投与しなかったコントロールマウスでは血清中コルチコステロン濃度は顕著に上昇したのに対し、NAT投与マウスではそうした上昇は検出されなかった。 4)NATの構造類似体として合成したN-acetyloxfenicine (N-acetyl-L-(4-hydroxyphenyl)glycine)が、NATと同様な抗ストレス耐性増強活性を示す事を発見した。
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