研究実績の概要 |
昨年度、ストレス条件下で体液中に分泌されるN-acetyltyrosine(NAT)がストレス順応性誘導活性を示すことは実証できた。本研究では、NATの構造類似体である4-Hydroxy-L-phenylglycine (N-acetyloxfenicine, NAO)に関して以下の新知見を得る事ができた 。 1)NAOを注射したアワヨトウ幼虫また摂食させたショウジョウバエ幼虫は、前ストレス処理を経験しなくとも、ストレス順応性獲得用生理状態になる事が分かった。即ち、先に、NATで証明したように、予めNAO注射あるいは経口投与した試験昆虫では、コントロール昆虫に比べ致死ストレス後の生存率が有意に上昇した。 2)NAOによるストレス順応性誘導機構をキイロショウジョウバエ由来の培養細胞S2を用いて解析した結果、体外から投与されたNAOは一時的にミトコンドリアを不活性化し、少量の活性酸素種(reactive oxygen species (ROS))を発生させる事が明らかになった。発生したROSは核への情報伝達物質として機能し、転写調節因子FoxOの転写レベルさらには細胞質から核への移行を促す。このFoxOの活性化に伴ってcatalase、superoxide dismutase1, 2 (SOD1, 2)の発現上昇を誘起し、結果的に細胞のストレス耐性の上昇を齎す。 3)さらに、予めNAOを1週間投与したヌードマウスとそうでない対象区ヌードマウスにヒト大腸ガン細胞HCT116を移植し、その増殖速度を比較した。その結果、その結果、NAO経口投与マウスではコントロールマウスに比べ有意に増殖が抑制される事が明らかになった。
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