研究課題
今年度は、下記の4小課題を実施した。1. 現地調査及び農業統計データ、リモートセンシングデータを活用した現状解析: タイの気象データについては、北部に加え東北部の気象データを収集し、データベース化した。気象データは、昨年度までと同様、気温・降雨・日照時間の日データを収集した。さらに、台湾については、台湾国立大学の共同研究者から入手した。当初予定していた、南アジア北部(インド亜大陸北部)については、収集の困難さから調査対象から外した。2. 土地生産力モデルによる栽培拡大可能地域の推定: 東南アジア北部に加え、台湾についても、土地生産力モデルへの入力データを収集した。また、タイにおいて、チェンマイ大学農学部(タイ)と共同で設営した、タイ北部ナーン県の調査地で、モデル検証のための現地調査を実施し、斜面農地の畑作による集約利用が進行していることを確認した。3. 栽培拡大の現状と将来の栽培拡大可能地域の可視化: 対象地域のうち、東南アジア北部のベースマップをデジタル化し、小課題2の実施過程で作成した気象データベースについても、地図化した。タイ北部・東北部については、この70年間に降雨の顕著な上昇が見られた数地点では、ヒートアイランド現象が気温上昇の主因であることを示した。また、資源データベースと作物生産モデルを使った、生産力シミュ―レーションを進めた。4. 高緯度・高標高地域に生産を拡大する際の問題点の抽出と解決策の提示: タイ北部ナーン県で環境負荷の実態を調査し、設定した調査地で、雨季後半の土壌浸食の実測を行い、また、土壌浸食モデルを構築した。降雨の表面流去量及び浸食量を推定するモデルを開発し、調査地のデータを用いて、モデルの検証を行った結果、熱帯サバンナ気候の斜面農地で広く適用可能であることを示した。
2: おおむね順調に進展している
どの課題も、多少の遅滞はあるものの、概ね、順調に進んでいる。気象データや農業統計の収集について、一部の対象国・地域では、少し遅れたり、困難さから断念したりしたが、その分、東南アジア北部に注力したおり、この地域では、予定より早く進行している。また、土壌浸食のシミュレーションモデルは確立したため、広域への展開が可能となっている。また、気象データベースもほぼ完成しため、長期間の作物生産力変動の解析が可能となった。
今年度は、昨年度に続き下記の4小課題を実施すると同時に、最終年度であるため、とりまとめを行う。1. 現地調査及び農業統計データ、リモートセンシングデータを活用した現状解析: 東アジア南部(台湾、我が国西南部)、東南アジア北部(大陸部山地部)で収集した、ここ20年の農業統計データ及びリモートセンシングデータのデータベース化を継続する。未収集の農業統計データでは、行政単位ごとのデータ収集を継続する。気象データは、最近年の日データ収集を継続する。2. 土地生産力モデルによる栽培拡大可能地域の推定: 上述の地域を対象として、収集した土地生産力モデルへの入力データ(気象データ以外の土壌・地形特性データ)をモデル入力のためデータベース化する。また、タイにおいて、昨年度、チェンマイ大学農学部と共同で実施した北部ナーン県でのモデル検証の調査結果を分析る。3. 栽培拡大の現状と将来の栽培拡大可能地域の可視化: 小課題1で収集・データベース化した、地球温暖化による熱帯作物の栽培地域拡大の現状のデータの地図化を完成させる。また、小課題2についても、完成した作物モデルを基に、地域生産力の地図化作業を行う。さらに、小課題2の実施過程で作成した気象データベースについても、地図化を進め、温暖化進行の現状を、気温・日射量・気温の地域間差異を可視化することによる解析を行う。4. 高緯度・高標高地域に生産を拡大する際の問題点の抽出と解決策の提示: 小課題1・2の進行に合わせて、キャッサバ・サトウキビについて、土地生産力推定モデルを台湾で適用する。一方、熱帯高標高地域への生産拡大に関する問題に対しては、タイ北部ナーン県を中心に、昨年度まで実施した環境負荷の調査結果をモデル化する。タイ北部ナーン県での実証試験の結果によりモデルの検証を行い、広域展開を図る。
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