研究課題/領域番号 |
16H02601
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高木 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50275088)
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研究分担者 |
渡辺 大輔 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (30527148)
那須野 亮 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (90708116)
知花 博治 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (30333488)
川本 進 千葉大学, 真菌医学研究センター, 客員教授 (80125921)
萩原 大祐 千葉大学, 真菌医学研究センター, 特任助教 (20612203)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酵母 / 一酸化窒素 / 酸化ストレス / シグナル伝達 / 病原真菌 |
研究実績の概要 |
1)NOの合成機構とその制御機構:酵母Saccharomyces cerevisiaeのジフラビンタンパク質Tah18と鉄硫黄クラスタータンパク質Dre2の相互作用について解析を行った。その結果、高濃度の過酸化水素処理によって、Tah18-Dre2複合体が解離し、酵母のメタカスパーゼMca1依存的にDre2タンパク質量が減少することが分かった。またMca1がNO合成に影響を及ぼす結果が得られ、Tah18依存的なNO合成の制御にMca1が関与する可能性が示された。高濃度の過酸化水素処理に伴うNO合成は細胞死を誘導することから、Dre2の挙動や機能がNO合成に伴う細胞死誘導に重要であることが示唆された。 2)NOおよびNO標的タンパク質の生理機能:酵母細胞内のニトロソ化タンパク質の探索、同定に必要なビオチンスイッチ法の検出感度が想定以上に低いことが判明し、実験系の確立には至らなかった。 3)病原真菌におけるNOの合成制御機構と生理機能:カイコ幼虫のテトラサイクリン転写抑制系を用いて、NO代謝との関連が予想されるCandida glabrataの遺伝子(S. cerevisiaeのDRE2, YHB1, SFA1, NCP1, MET10, CYT1などのオルソログ)について、カイコ感染実験を行った。その結果、生育に必須とされる遺伝子の転写を抑制すると感染性が低下したことから、NO代謝との関連性が明確な遺伝子は見出せなかった。また、Aspergillus fumigatusにおいてNO関連遺伝子(MPR1オルソログmprA)の破壊株および過剰発現株を作製し、各種培地やストレス条件下での生育を評価した。その結果、硝酸を窒素源とした最少培地、YPD、ポテトデキストロース培地上で野生型株と変わらない生育を示し、高温や過酸化水素による酸化ストレスに対しても野生型株との違いは認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母におけるNOの合成機構とその制御機構の解析については。Dre2がTah18依存的なNO合成を阻害すること、酸化ストレスに応答して、Dre2がTah18から解離することを見出し、Dre2が酸化ストレスセンサーとして働き、NO合成を制御する機構を提唱した。また、NOは高温ストレス耐性に寄与する一方で、高濃度の過酸化水素存在下で細胞死を誘導することから、二面性(細胞保護・細胞毒性)が示唆された。一方で、酵母におけるNOおよびNO標的タンパク質の生理機能の解析については、細胞内のニトロソ化タンパク質の探索、同定に必要な実験手法(ビオチンスイッチ法)の確立が予想以上に難航している。具体的には、ニトロソ化を検出するビオチンスイッチ法の検出感度が想定以上に低いことが判明した。また、病原真菌におけるNOの合成制御機構と生理機能の解析については、Cryptococcus neoformansについては、アルギニン代謝系に着目し、各酵素(Mpr1, Arg7, Car1, Car2など)のオルソログ遺伝子の破壊株を用い、NO産生量、アルギニン含量、各種ストレスに対する表現型などの解析を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
1)酵母におけるNOの合成機構とその制御機構の解析:酵母のオキシゲナーゼ様タンパク質を同定し、NO合成における分子機能を解析する。また、酵母を用いてカスパーゼ依存的な細胞死の分子機構や生理的意義に対する理解を深める。さらに、Tah18依存的なNO合成機構およびその普遍性の解明を目的に、Tah18の哺乳類ホモログNdor1、Dre2の哺乳類ホモログCiapinに着目し、Tah18-Dre2と同様にNO合成やその制御に関与しているかどうかを解析する。 2)酵母におけるNOおよびNO標的タンパク質の生理機能の解析:ニトロソ化を検出するビオチンスイッチ法の検出感度を高める必要があることから、実験系の条件検討を詳細に行い、再現性のある実験系の確立を目指す。 3)病原真菌におけるNOの合成制御機構と生理機能の解析:引き続き、NO関連遺伝子の変異株や過剰発現株を用いて、細胞内NOが及ぼす影響とその制御機構を解析する。また、病原真菌のNO応答機構を明らかにするために、トランスクリプトーム解析を行う。
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