研究課題/領域番号 |
16H02611
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
大高 章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (20201973)
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研究分担者 |
伊藤 孝司 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (00184656)
真板 宣夫 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 准教授 (00404046)
広川 貴次 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究チーム長 (20357867)
原 孝彦 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 分野長 (80280949)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | タンパク性医薬品 / タンパク質チオエステル / タンパク質ヒドラジド / 配列選択的反応 |
研究実績の概要 |
本基盤研究では一貫して、タンパク質中の天然配列を配列選択的にチオエステルに変換する方法論の開発およびその応用展開研究を手がけてきた。その結果、Ni金属を利用する手法ならびに特定のシステイン残基のみをシアノ化する手法の開発を行い、ペプチドレベルにおいて十分適用可能であることを示してきた。しかしながら、タンパク質への利用には障害があった。これは、反応に使用できる溶媒の選択や反応操作が煩雑であり、タンパク質への応用には適さないということが原因であった。そのような中、28年度に見出したカルボキシペプチダーゼによるヒドラジド化反応とこれに続く特定配列の自己編集反応の応用について29年度は研究を展開した。その結果、天然配列のC末端に、Xaa-Cys-Pro-Leu-OH配列を導入し、まず、これをヒドラジン存在下で酵素処理するとXaa-Cys-Pro-NHNH2に変換され、これを化学反応によりXaa-Cys-Pro-SR体にすると、自発的な2残基遊離反応が進行し、目的とするチオエステル体(Xaa-SR)に効率的に変化するすることを見出した。この方法論における研究上の重要ポイントは、過剰反応を抑制し、Leuの遊離のみを伴うヒドラジド化と反応剤として有用性がないPro-SRを如何にして他のアミノ酸チオエステル体に変換できるのかという点であったが、従来までの研究成果を利用することでその隘路を克服することができた。なお、本研究成果は、従来法を凌駕する極めて有用な方法論の創出に繋がると考え、更なるタンパク質分子への展開とこれを起点とする修飾反応への応用を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
タンパク質チオエステルは次世代型タンパク質医薬品の創製に極めて有用な合成中間体であり、これを発現タンパク質から容易に調製する手法が強く求められている。これまでの研究により、この目的を達するための新たな反応システム3種の開発に成功した。しかし、最初に開発した2つの方法論についてはタンパク質への展開については大きな障害があった。しかし、28年度、29年度で開発を進めたカルボキシペプチダーゼを利用する手法は、極めて効率的な反応であるとともに、初期検討レベルであるがタンパク質への応用も可能であるとの知見を得つつある。この成果は、本研究の目標到達を目前とする成果であり、計画以上に研究が進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
カルボキシペプチダーゼを利用したペプチドチオエステルを与える反応のタンパク質分子への適応が大きな課題である。これらの課題にたいする検討を通じて、100~150残基程度の小タンパク質を対象とし、選択的修飾反応を試みる。現在、我々の別の研究課題として自然免疫不活性作用を有するケモカインCXCL14の機能解析を進めており、このCXCL14研究に本研究成果を投入する予定である。また、100残基程度のタンパク質での検討が順調に進んだ場合にはタンパク性医薬品への展開を念頭に抗体分子の修飾に挑戦する。さらにDDS分野におけるドラッグキャリアーとして注目を集めている血清アルブミン分子の医薬品修飾分子への変換を手がける。
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