研究課題
DNMT1/NP95経路とポリコム群遺伝子発現抑制の間にあるリンクを詳細に記載するための研究を実施してきた。DNMT1をコンディショナルにノックアウトできるES細胞を用いて、遺伝子発現、PRC1とPRC2の結合パターンを系統的に明らかにした。その結果、多くのポリコム群の標的において、脱抑制、RING1Bの結合量の低下、H3K27me3とPRC2結合の減少が観察された。それに対応して、DNMT1の結合もそれらの遺伝子座においては、多少なりと高くなっていることも見出し、DNMT1は、リピート群だけではなく、長いCpGアイランドにも結合することが明らかになった。RING1Bを含むPRC1は、カノニカルPRC1と異型PRC1の少なくとも2つ以上の複合体として存在するが、KDM2Bを含むPRC1は、カノニカルPRC1 とPRC2に対してエピスタティックに作用することが示されている。おもしろいことに、KDM2Bの標的遺伝子群への結合は亢進していることが示された。しかしながら、野生型とDNMT1欠損細胞でKDM2Bをノックダウンした時、同様なRING1B結合、PRC2結合の低下が観察された。このことは、DNMT1はKDM2Bの下流として作用していることが示された。このことは、PRC2→カノニカルPRC1経路が作用するためにDNMT1は必要とされることを示す。また、DNMT1の機能発現メカニズムを解析するべく、CpGアイランドにリクルートするために機能するCXXCモチーフ、あるいは、複製フォークへのリクルートに寄与するドメイン、あるいは、メチルトランスフェラーゼドメインを欠損するDNMT1をDNMT1欠損細胞に導入し、安定発現株を樹立した。これらにおいては、DNAメチル化レベルの回復は見られなかったものの、RING1Bの標的への結合は回復しないことが示された。
2: おおむね順調に進展している
幾つかの点で、予想とは異なる結果(異型PRC1は機能的な標的ではなかったなど)が得られたため、適宜短期的な目的を修正しながら研究を進行させている。観察そのものの頑健性は実験を積み重ねることで担保されつつあり、順調に進んでいると自己評価する。
今までの研究の進行状況を鑑み、29年度は以下のように研究を進行する予定である。① CGIsにおけるDNMT1とKDM2Bの機能的関連の解析: DNMT1をES細胞においてノックアウトするとRING1BのリクルートメントとH3K27トリメチル化が大きく障害される。PRC1リクルートメントの足場と考えられるKDM2Bの標的への結合を調べたところ、逆にそれが大きく亢進していることが示された。このことは、DNMT1はKDM2BとPRC1の相互作用を調節するメカニズムである可能性を示唆する。今年度は、この可能性を検証するためにDNMT1-KO ES細胞とNP95-KO ES細胞を用いて、PCGF1-PRC1コンポーネントのChIP-seq解析を行う。また、逆に、KDM2B-KO ES細胞におけるDNMT1とNP95のCGIsへの結合を同様に解析する。② DNMT1とKDM2Bの複製フォークにおける振る舞い:DNMT1とNP95が複製フォークで作用することはよく知られるところであるが、KDM2Bについてはよく知られていない。複製フォークは、DNMT1とNP95とKDM2Bとの機能的相互作用がおこる場所として最初に検討すべきドメインである。DNMT1-KO、NP95-KO、及び、KDM2B-KO ES細胞を用いて、複製フォークへの DNMT1、NP95とKDM2Bの結合がどのように変化するのか、iPOND法と免疫染色法を用いて、検証する。また、それぞれの変異によってどのように複製フォークの構造が変わるか、iPOND後の材料をプロテオム解析を行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 5件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)
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