研究課題
DNMT1/NP95経路とポリコム群遺伝子発現抑制の間にあるリンクを詳細に記載するための研究を実施してきた。今までに、ポリコム群は、ES細胞においてCpGアイランドにKDM2B/PCGF1-PRC1→PRC2→カノニカルPRC1というカスケードを使って抑制性クロマチンを形成して、標的遺伝子群を抑制することを他の研究において明らかにしてきた。H28年度までに、DNMT1はKDM2Bの下流として作用していることを示し、PRC2→カノニカルPRC1経路が作用するためにDNMT1は必要とされることを示してきた。この過程において、DNMT1のどの機能ドメインが必要であるのかを明らかにするために、CpGアイランドにリクルートするために機能するCXXCモチーフ、あるいは、複製フォークへのリクルートに寄与するドメイン、あるいは、メチルトランスフェラーゼドメイン、あるいは、ユビキチン結合ドメインを欠損するDNMT1をDNMT1欠損細胞に導入し、安定発現株を樹立した。驚いたことに、これらにおいては、いずれもレトロトラスポゾンにおけるDNAメチル化レベルの回復がみられなかった。しかしながら、いづれの欠損においても、RING1Bの標的への結合は回復することが示された。現在、BAHドメインに焦点を絞った解析を行っている。また、カノニカルPRC1のリクルートメントについてより詳細な解析を行い、CBX7のリクルートは障害されているもののPCGF2(MEL18)については大きな変化がないことがあきらかになった。このことは、カノニカルPRC1のアッセンブリー過程が機能標的である可能性を示唆しており、現在カノニカルPRC1の個々の構成成分について標的への結合を検証している。
2: おおむね順調に進展している
幾つかの点で、予想とは異なる結果(どの個々のドメインにも機能発現を帰することができなかったなど)が得られたため、適宜短期的な目的を修正しながら研究を進行させている。観察そのものの頑健性は実験を積み重ねることで担保されており、順調に進んでいると自己評価する。
今までの研究の進行状況を鑑み、30年度は以下のように研究を進行する予定である。① CGIsにおけるDNMT1とカノニカルPRC1の機能的関連の解析: 前述のようにカノニカルPRC1の各構成成分のリクルートメントの間に乖離が見られた。このメカニズムを明らかにするために、RYBPやYAF2のようなカノニカルPRC1にCBX群と競合的に結合しうるコンポーネントについて、DNMT1やNP95への依存性を明らかにする。② DNMT1によるポリコム群リクルートメント活性のメカニズムの解析:DNMT1やNP95を強制的にクロマチン上に結合させ、各ポリコム群コンポーネントの周辺へのリクルートメントが起こりうるかを検討する。これにより、DNMT1やNP95を欠損したES細胞におけるポリコム群の結合変化が、直接な結合を介した変化であるのか、あるいは、別の要素を介在させるものであるのかが検証可能となる。また、今までのDNMT1 に対する免疫沈降/ウェスタンブロッティングから、RING1Bが免疫沈降されうる可能性が示された。DNMT1とPRC1の直接的な結合の可能性について、免疫沈降/質量分析によって検証を行う。③ DNMT1によるポリコム群リクルートメント活性の遺伝子とリピートにおける比較:少量ながらポリコム群がレトロトランスポゾンなどの因子にリクルートされることはよく知られているところであるが、そのメカニズムについてはよくわかっていない。DNMT1とNP95が、それらのDNAメチル化維持に寄与することはよく知られている。リピート領域におけるポリコム群の活性にDNMT1とNP95がどのように寄与するのか、あきらかにする。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 7件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 8件、 招待講演 8件)
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