研究課題/領域番号 |
16H02630
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高濱 洋介 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 教授 (20183858)
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研究分担者 |
大東 いずみ 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 准教授 (00596588)
高田 健介 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 准教授 (40570073)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 免疫学 / Tリンパ球 / 胸腺 / 正の選択 / レパトア |
研究実績の概要 |
胸腺は、免疫システムの司令塔であるT細胞を分化させ、産生するT細胞が自己に有用で寛容になるよう選択する器官である。私たちはこれまでに、胸腺皮質上皮細胞に特異的に発現される胸腺プロテアソームとその構成鎖β5tを同定するとともに、胸腺プロテアソーム依存性「正の選択」は、CD8陽性T細胞の有用レパトア選別のみならず、選別するT細胞の機能を至適化することを見出してきた。そこで本研究では、胸腺プロテアソーム依存性または不在下に選択されたT細胞を対象に、1.感染・移植・がんに対する免疫応答と免疫記憶の動態相違を比較解析することで、正の選択による機能的至適化の意義を明らかにし、2.シグナル伝達分子の量と修飾状態を包括的に比較解析することで、正の選択による機能至適化の分子実体を明らかにすることを目的としている。 研究初年度の平成28年度には、Rag2欠損マウスに交配したOT-I-TCRトランスジェニックマウス由来のモノクローナルTCR発現CD8陽性T細胞を対象に、感染応答を模倣した免疫応答における正の選択による機能的至適化の意義の解析を開始し、胸腺プロテアソーム依存性または不在下に選択されたT細胞はそれぞれ、抗原刺激の様態に応じて発現されるサイトカイン等の応答分子プロフィールが異なることを明らかにした(未発表)。また、種々のがん細胞に対するCD8陽性T細胞依存性の免疫応答計測法の確立に向けた実験を開始した。更に、胸腺プロテアソーム依存性または不在下に選択されたT細胞を対象に、プロテオーム解析等を行うことで、シグナル伝達分子の量と修飾状態の解析を開始した。これらの解析を推進していくことで、免疫学の中核的重要課題「正の選択とは何か」の解明に寄与し、免疫制御に新技術を与えたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、本研究の初年度であったにもかかわらず、胸腺プロテアソーム依存性または不在下に選択されたT細胞が、免疫応答において互いに異なるサイトカイン発現プロフィールを示すことを明らかにすることができ、胸腺プロテアソーム依存性のTCR直下シグナルの解明に向けて大きく前進がみられたばかりでなく、本研究の大目標である「正の選択とは何か」の解明に向けて拍車がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 正の選択によるT細胞機能至適化の生体内意義の解析:トランスジェニックTCRが特異的に認識する抗原分子を発現するウイルス、細胞内寄生細菌、アロ移植組織、がん細胞、それぞれに対する免疫応答と免疫記憶の質とマグニチュードを比較解析することで、T細胞の機能を至適化する「正の選択」プロセスが免疫システムによる生体防御にどのように貢献するのか解析を進める。 (2) 正の選択によるT細胞機能至適化の分子実体の解析:同一TCRを発現しながら胸腺プロテアソーム依存性に機能至適化されたT細胞と胸腺プロテアソーム不在下で機能至適化されなかったT細胞を対象に、シグナル伝達分子の量と修飾状態について、CD5, CD8, CD69など既知のT細胞抗原受容体シグナル調節分子の発現量と細胞内局在の包括的解析を順次進める。また、質量分析計を用いて発現されているタンパク質の網羅的解析を進める。これらの実験を推進することで、胸腺プロテアソーム依存性「正の選択」によるT細胞機能至適化の分子実体解明に迫る。
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