研究課題
がん診断等で注目を集めるポジトロンCT(PET)はその誕生以来40年間改善が続けられてきた。一方、微小がん・脳内異常たんぱく質の超早期検出や再生医療の可視化など、近年高まる個々の細胞の生体内挙動を追跡するニーズに応えるためには、PETの感度は不十分であり、新しい原理の診断法の発明が求められる。そこで本研究では、全ガンマ線イメージング(Whole Gamma Imaging: WGI)コンセプトを提案し、世界初の実証を目指す。WGIは、ガンマ線のすべてを計測して画像化に使うことで、ごく微量の体内物質でもリアルタイムに3次元画像化する。具体的には、Sc-44などβ+崩壊とγ線放出がほぼ同時に起こる3γ核種の利用と、コンプトンカメラ兼PET検出器の新規開発とそのリング状配置がポイントである。511keVの消滅放射線ペアとほぼ同時に1157keVの単一γ線をほぼ100%の確率で発生する半減期約4時間のSc-44は、理想的なWGI核種である。消滅放射線ペアの同時計数により限定される線分と、単一γ線のコンプトンイメージングによる円錐表面の交点から、たった1回の崩壊でも核種位置を特定できる。この3γ事象の検出効率を最大化するため、コンプトンカメラ兼PET検出器を新規開発し、測定対象を囲むように配置する。3年計画の2年目である平成29年度は、以下のとおり、概ね計画通りに研究が進行した。(1)位置弁別アルゴリズム開発については、DOI検出器内での多重相互作用イベントの除去・位置弁別方法を開発した。(2)読出し回路開発では、回路の製作を行った。(3)検出器試作・評価については、検出器試作・評価を通じて検出器仕様を確定した。(4)Sc-44製造・合成技術については、製造における分離精製の高効率化手法について検討した。
2: おおむね順調に進展している
(1)位置弁別アルゴリズム開発、(2)読出し回路開発、(3)検出器試作・評価、(4)Sc-44製造・合成技術のいずれにおいても、計画通り研究が進捗したため。
当初計画どおり、(1)位置弁別アルゴリズム開発と(2)読出し回路開発の実施を予定している。特に、本研究の最終目標である試作機完成と原理実証について、重点的に実施する予定である。
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http://www.nirs.qst.go.jp/usr/medical-imaging/ja/study/pdf/QST_R_7.pdf