研究課題/領域番号 |
16H02644
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
二宮 利治 九州大学, 医学研究院, 教授 (30571765)
|
研究分担者 |
神庭 重信 九州大学, 医学研究院, 教授 (50195187)
北園 孝成 九州大学, 医学研究院, 教授 (70284487)
秦 淳 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00448432)
小原 知之 九州大学, 医学研究院, 助教 (20623630)
吉田 大悟 九州大学, 医学研究院, 助教 (10596828)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 認知症 / 頭部MRI検査 / 疫学研究 / 前向きコホート研究 / 危険因子 / 脳画像研究 |
研究実績の概要 |
わが国では、高齢人口の急速な増加に伴い、脳血管障害や認知症を有する患者が急速に増加している。さらに、近年老年期うつ病も高齢者の生活の質及び日常生活動作を低下させる疾患として注目されている。認知症とうつ病の病態生理を明らかにする上で、脳の形態学的変化との関係を検討することは極めて重要である。福岡県久山町では50年以上前から地域住民を対象とした疫学研究(久山町研究)を継続している。本研究グループは、平成24-25年度に久山町高齢者の約70%において頭部MRI検査の実施した実績を有する。そこで本研究では、同町の高齢住民を対象に脳形態学的変化と認知機能低下及び認知症・うつ病発症の関係を検討する。さらに、今回の研究でも頭部MRI検査による脳形態評価を実施し、前回の結果と比較する。これにより、脳形態の縦断的変化を前向きに評価するとともに、脳形態変化に影響を及ぼす危険因子の探索を行う。 平成29年度は、久山町の65歳以上高齢住民2,193人(受診率 94%)を対象に認知症、うつ病のスクリーニング調査を実施した。認知症やうつ病の調査には、質問紙を用いた面接調査を用いた。一次調査で認知機能低下やうつ病が疑われる者に対して専門医による二次調査を行い、臨床的に認知症、うつ病の有無を判定した。さらに、前述の対象者のうち1,566人において磁束密度1.5テスラの頭部MRI及びMRA検査を施行した。また、平成24-25年度に久山町高齢者を受診した対象者の認知症とうつ病発症の追跡調査を継続した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度は、当初の研究計画をすべて達成した。久山町の65歳以上高齢住民2,193人(受診率 94%)を対象に認知症、うつ病に関する調査を完了した。本来の計画では本調査の完了には、平成30年度までかかることが予想されたが、当初の計画以上に進展し、本年度中に目的とする調査人数に達した。さらに、前述の対象者のうち1,566人において磁束密度1.5テスラの頭部MRI及びMRA検査を施行した。 また、認知症予防において有意義な研究成果を報告した。まず、地域高齢住民における微小脳出血の有病率と危険因子に関する研究論文が、Neurology: Clinical Practice誌に受理された。さらに、地域住民の未破裂脳動脈瘤に関する研究成果を第26回日本脳ドック学会総会(福岡市、2017年6月9日)で報告した。 加えて、平成24年から実施している認知症、うつ病、死亡に関する追跡調査を継続し、データ整備を行った。上述の平成29年度の認知症、うつ病に関する調査のデータ整備を完了し次第、平成24年から29年までの5年間の認知症およびうつ病の発症、死亡に関する追跡調査のデータセットを作成し、縦断的解析を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は以下の内容を実施する. ①平成29年度に久山町地域高齢者を対象に実施した認知症やうつ病に関するスクリーニング調査と頭部MRI検査のデータ整備および平成24年以降収集した脳血管障害、認知症、うつ病に関する追跡調査のデータを整備を行う。 ②平成24-25年に施行した横断研究の成績を用いて、深部白質病変や萎縮などの脳の形態学的所見を検討する。 ③平成24年から平成29年の5年間の頭部MRI画像の前向き追跡データを用いて、無症候性脳梗塞、無症候性微小脳出血、未破裂脳動脈瘤の年間発症率を明らかにする。また、脳萎縮及び深部白質病変の程度の変化を検討する。さらに、脳形態の縦断的変化に影響を及ぼす危険因子の探索を行う。 ④平成29年度以降も認知症、うつ病、死亡に関する追跡調査を継続し、追跡データの整備を行う。
|